アブルッツォ滞在の日程も、残り少なくなってきた。
ペスカーラから最後の日帰りは、キエティ県のヴァストへ。
日本出発前は、その町の名前さえ知らなかった。前日訪れたランチアーノの観光案内所で見つけた、近隣各都市のパンフレットを見て、急遽行ってみようという気になったところ。
長年イタリアを見てきて、こういった資料の第一印象がツアー造成に役立ってきたので、気になったところは訪れておくことにしている。
そもそも旅はそのようなもの、事前に決めたスケジュール通りにいかないのが旅行だと実感した。
アドリア海のリゾート
前日同様、アドリア鉄道を利用してペスカーラからヴァストへ。朝から直通の列車に乗ることが出来た。
ヴァストは、ラファエロ前派の画家、ダンテ・ガブリエレ・ロッセッティが生まれた町として知られている。アドリア海に面したマリーナ地区と、丘の上にある旧市街に分かれた町だ。
2つの地区は、バスで10分ほど離れている、なかなか珍しい町。
駅に着くと、バスが1台停まっていた。聞くと、このバスは旧市街行きだという。
すぐにも発車しそうなのだが、あいにく乗車券を買う小銭を持っていなかった。運転手もおつりがないのか、「タバッキ、タバッキ」と繰り返し言っている。
どうやら、駅の入口にあるタバコ屋でチケットを買って来い、ということらしい。発車間際なので急いでタバコ屋でチケットを購入し、どうにか旧市街行きのバスに乗ることが出来た。
バスはマリーナ地区を通って、丘の上にある旧市街へ向かう。
バス通りの途中には、大型のリゾートホテルが何軒も並んでいた。訪れたのはちょうどサマーシーズンだったので、「日程を延長してマリーナ地区に宿泊したい」という気持ちに心惹かれながら、そのまま旧市街へ。
15分ほどで中心のロッセッティ広場に到着。
前日収穫したパンフレットで見た通りの光景が広がっていた(冒頭写真)。
筆者は、仕事でヨーロッパの街並みをスケッチするグループ旅行を手掛けているが、まさに格好の町だと思った。すぐに細い路地を歩き回る。
特筆すべきは、冒頭写真のカステッロ、そして、海が一望できるアドリアーティカ通りに建つ、13世紀のファサードを持つサン・ピエトロ教会だ(下写真)。
一度細い路地に戻って歩き続けると、この町の大聖堂が見えてきた。
ひときわ高い鐘楼の上部は、金属の飾り細工になっている。
サン・ピエトロ教会と言い、この大聖堂と言い、普段イタリアで見られる建築様式とはだいぶ違うようだ。
アブルッツォの建築様式は、独特だった。
ヴァストでのランチ
一通り取材がすんだので、アドリアティーカ通りに戻り、その広場にあるレストランIl Principe Abusivoでランチ。ちょうどお腹がすいてきたところだ。
海の幸が名物のペスカーラに滞在中にもかかわらず、ペスカーラではシーフードをほとんど食べていない。
気持ちはアマルフィからAlici(カタクチイワシ)を引きずったままなので、ここでも前菜はいわし。マリネは酸味が程よく、疲れた体にとてもいい感じだ。
続いて頼んだパスタは、海の幸のリゾットとムール貝のパスタ。それにいつものビールで満足だ。それにしても、パスタがうまい。
隣のテーブルでは、大人数の家族がみんなでバーベキューのような肉のかたまりを囲んでいた。海辺で肉とは…、イタリア人はいつも自由だ。
食事がすんだら、来た道を戻る。
途中、マリーナ地区でスーパーを見つけたので途中下車し、本日の夕食になりそうなものをあれこれ買い込んだ。
明日はアブルッツォを離れ、再びヴェネチアへ向かう予定だ。
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