添乗員が個人でめぐるイタリア旅行記 #1|まぼろしの直行便でヴェネチアへ

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シチリア シラクーザ

【シチリア シラクーザ】

毎年出張でイタリアへは出かけているが、添乗員として出かけるとなるとあちこち自分の希望通りに訪れることができない。ある年、添乗の仕事がないので夏休みを兼ねて、今自分が最も見てきたいイタリアを見てこようと計画した。

今回の出張でやりたかったこと、見てきたかったものは、

  1. 以前メインPCのクラッシュで失くしてしまったシチリアの写真を取り直してくること
  2. イタリアで最もモヤモヤしていた州、アブルッツォを見てくること
  3. 出来る限り最新の鉄道事情を見てくること
  4. 最近のアマルフィを見てくること

の4点。それ以外に新たな発見があればなおよし。常々、「自分が楽しまなければお客様へ旅行案内などできない!」と自分に言い聞かせ、仕事でも個人でも旅を楽しむことにしている。

この度の旅行記は、業界以外の一般の人が行くイタリア旅行の参考にはならないかもしれない。だが、旅行のプロの目線で見て、食べて、感じてきた、ガイドブックにはあまり出ていないイタリアを紹介しようと思う。

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シチリア・アマルフィ・アブルッツォ行きを計画する

そもそも、仕事(添乗業務)とは別に個人でイタリアへ行こうと思い立ったのは、旅行会社在職者ならではの特典、様々な航空会社からの特別運賃航空券が提供されたから。航空会社の販売促進や新規路線キャンペーンとして、先に業界の人達に搭乗してもらおうというのが主な目的だろう。

今はすでに運航していないが、このとき(2014年)アリタリア航空が成田~ヴェネチア線の新規就航を発表し、この業界向け特別運賃航空券の案内がきた。条件は、

  1. 対象者は旅行業界在職者(旅行会社、宿泊業を含む)及びその家族
  2. 日本発着は成田~ヴェネチア線を利用すること
  3. ヴェネチア以遠はアリタリア航空運航の欧州内及びイタリア国内線2区間まで
  4. 空港税や燃油代は実費を支払うこと

だった。

1はクリアできる。仕事のパートナーと2名で行くので、名刺又は外務員証コピーを航空会社へ送ればよい。

すこしややこしいのは、2と3だ。アリタリア航空といえば、ハブ空港はローマ又はミラノである。しかし今回は往復とも成田~ヴェネチア線を利用しなければ、この航空券を利用することはできない。
しかし、めったにない金額の特別航空券だ。これを利用しない手はないので、この条件から旅行を計画した。

冒頭で触れた通り、普段の業務でできないことをするための視察を兼ねた旅行なので、シチリア、アマルフィ、アブルッツォは外せない。
ヴェネツィアは国際線発着のため、到着時、帰国時に必ず訪れることになる。だからヴェネチアには重点を置かず、できるだけ目的地へスムーズに移動するため、陸路移動を駆使して日程を組んだ。その日程は、

1日目 成田~ヴェネチア(空路) ヴェネチア泊
2日目 ヴェネチア~ローマ(鉄道) ローマ泊
3日目 ローマ~カターニャ(空路)~シラクーザ(バス) シラクーザ泊
4日目 シラクーザ滞在 シラクーザ泊
5日目 シラクーザ~ラグーザ往復マ(鉄道) シラクーザ泊
6日目 シラクーザ~カターニャ(バス)~ナポリ(空路)~アマルフィ(専用車) アマルフィ泊
7日目 アマルフィ~チェターラ往復(バス) アマルフィ泊
8日目 アマルフィ~サレルノ(専用車)~スルモーナ(鉄道) スルモーナ泊
9日目 スルモーナ~ラクイラ往復(鉄道) スルモーナ泊
10日目 スルモーナ~タリアコッツォ~ペスカーラ ペスカーラ泊
11日目 ペスカーラ~ランチアーノ往復(鉄道) ペスカーラ泊
12日目 ペスカーラ~オルトーナ往復(鉄道) ペスカーラ泊
13日目 ペスカーラ~ヴェネチア(鉄道) ヴェネチア泊
14日目 ヴェネチアより帰国 機内泊
15日目 成田到着

というものだ。

航空券は1日目、3日目、6日目、14日目のみ。これで特別航空券の条件はクリアする。鉄道で移動できるところは出来る限り鉄道を利用し、そのため事前にユーレイル・イタリア・パスを用意した。余談だが、レイルパスも業界用特別料金があるので、それを利用する。
ちなみに12日目はアブルッツォでの予備日としていたが、結果としてオルトーナは訪れず、前日訪れたランチアーノでヒントを得たキエティ県ヴァストを訪れた。

宿泊はヴェネチアを除いて、なるべく連泊とした。カメラ、ビデオ撮影を予定していたので、荷物を持ったままの視察はしづらいからだ。スルモーナのホテルは、普段旅行を手配するための業界向けホテル検索サイトになかったため、ホテルに直接メールを入れて予約した。

普段から顧客へオーダーメイドの旅行を案内する際、最低限の移動・宿泊だけを事前に手配し、それ以外は現地で見聞きしたものを体験するよう勧めているので、自分達の旅行もこれ以上は手配しない。旅は予期せぬことの連続だ。現地で対応するよう、最低限の手配とした。

夏休みを兼ねたとはいえ、一応仕事のための視察旅行だ。会社の経費で落とせるものはすべて経費とする。これで準備は整った。

成田から直行便でヴェネチアへ

成田からの直行便(今は運航していない)は約15時間でヴェネチアに到着。ヨーロッパへの直行便にしては少々長いフライト時間だ。サマータイムのため、ヴェネチア到着時はまだ夕方という感じだった。

初日は少し楽をしようと思って事前に手配しておいた空港送迎の係員(日本語を話すイタリア人女性)が我々を出迎え、車へと案内してくれる。サンタルチア駅に近いローマ広場までおよそ30分。そこで車を降り、駅を通り過ぎてホテルまで徒歩で移動。契約はローマ広場で終了だが、係員は丁寧にホテルまで送ってくれた。

翌日は鉄道でローマへ移動予定のため、ホテルは駅に近いHotel Principeを予約した。駅からホテルまでは徒歩で5分程度といったところ、便利だ。

部屋に入ると早速部屋全体の撮影、これも仕事の資料になる。

Hotel Principe

蛇足だが、筆者のパートナーは今回が初のイタリア訪問だ。その意味では、業界にいながらイタリア旅行については一般の旅行客と変わらない。だから普段の仕事以外に、イタリアらしいところも道中に入れていこうと思っている。それは、食事やイタリアならではの楽しみ方だ。

イタリア人にとっての憩いの場は、何と言ってもバール。朝は朝食代わりにカプチーノとパンを食べに出かけ、そこで朝のおしゃべりを楽しむ。昼は軽いランチの場。以前タクシードライバーに聞いたが、イタリアにいるからといって毎日パスタを食べるわけではないと言っていた。理由は太るからだそう。それと同様で、毎日リストランテでランチを取るイタリア人などいない。

レストランが昼の営業後夕方までクローズしてしまっても、その間もバールは営業している。

夕方は、カプチーノやエスプレッソがビールやワインに変わり、親しい人たちとのひとときの場となる。そしてアルコールが提供されるからといって、日本の様に真夜中まで営業しているところは数少ない。

朝から晩まで生活の一部になっているバールは、イタリアに来たら利用しない手はない。

15時間も座りっぱなし、それに加えて出てくる機内食でさほど空腹も感じていなかったが、翌日からの時差ボケ防止のため部屋で休むことはせずに、すっかり暗くなったホテルの近所へ。
すでに夜10時だったが、ホテルから徒歩2~3分のバールを見つけ、さっそく見つけたバールでビールと軽いつまみをオーダー。

初日は特にトラブルもなく終了した。

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利用航空会社について

アリタリア航空

航空会社からの特別航空券を利用させていただいたため、少し利用した便について書いておこう。

今回の利用便は、出発直前にあったウクライナでのマレーシア航空機撃墜というショッキングな出来事があったためか、通常欧州線で利用するシベリアルートではなく、日本からヨーロッパまでほぼ真横に西へ西へと移動するルートだった。最終的に、イタリア半島に面したアドリア海を北上してヴェネチアへ到着。通常の欧州路線は北極圏のほうから南下するルートが多いのだが、このルートのせいなのか途中結構な横揺れが激しかったのが気になった。

機内食は離陸後1時間ののちは到着後2時間前の軽食まで、途中に配られるおにぎりかサンドイッチ1個のみ。ギャレーにいつもカップラーメンを用意して自由に食べることができる航空会社が増えた中、少々少ないなという感想を受けた。

この頃から各航空会社が導入したウェブチェックインは非常に便利だった。旅行中PCを持ち歩いていたので、ウェブサイトで各フライトの2日前に自分で座席を指定できる。さらに、ウェブサイトから搭乗券をスマートフォンなどに転送すれば、それでゲートまで移動できる。

空港では長い列を作ってチェックインカウンターに並ぶ必要もなく、スーツケースだけDrop Off Counterに預けるだけ。これからはどんどんこうなっていくのだろう。

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