新たな旅行業モデル「ホームエージェント」は旅行スタイルをも変える!?

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Small Office Home Office

ホームエージェント イメージ

コロナ禍で、小さな旅行会社の廃業が増えた。

生き残れるのは大手のみと思いきや、JATA(日本旅行業協会)では、新しい旅行業モデルとして「ホームエージェント」を提唱し、減り続ける業界の人材確保に乗り出そうとしている。

開業から20年、一貫してSOHOトラベルエージェントとして営業してきた筆者からすれば、「何を今さら」とも思うが、コロナ禍をきっかけに旅行業のスタイルも変化すべき点は納得する。

そして、このホームエージェントが定着すれば、日本の旅行スタイルも変わっていくのではないか。

キーワードは「団体より個」だ。

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ホームエージェント ≠ SOHOトラベルエージェント

「ホームエージェント」とは、米国ですでに一般化している、いわゆる「パパママエージェント」のこと。在宅で旅行事業を営む、SOHO型の旅行業スタイルだ。これを日本でも導入し、すでに引退したOBOG人材の活用、あるいは新しい働き方として普及に取り組むというもの。

「それなら、うちは20年前からホームエージェントじゃ!」

と筆者は思う。開業当初からSOHOで旅行業登録をし、5年ごとの更新をすでに4回クリアしてきた(2022年現在)。

開業時は、旅行業がさまざまな要因(イラク戦争、SARSなど)で、ちょうど苦しい時だった。そんなときに独立起業するには、徹底的なコストダウンが必要だった。

企業や店舗のコストで最もかかるのは、テナント料と人件費。その2点を合理的に排除できるスタイルが、SOHOトラベルエージェントだった。

旅行業登録については、最低限自分たちがやりたい旅行業を見据え、第3種旅行業で登録した。旅行業代理業では、できることに制限があるからだ。

在宅でありながら、店舗型エージェントと同等レベルに営業していくためのツールは、ウェブサイトのみ。開業時、インターネットだけで営業し続けることに不安はあったが、なんとか20年営業できている。蛇足だが、ウェブサイト制作に関する知識も身についた。

つまり、SOHOトラベルエージェントは、「Small Office, Home Offide」でありながら、旅行カウンターがウェブサイトに変わっただけで、なんら今までの旅行業スタイルと変わらないサービスを提供できるというものだ。

だが、JATAが提唱している「ホームエージェント」は、旅行業登録区分の見直しはせず、まずは現行の旅行業者代理業者の範囲内で、このスタイルの普及を図るというもの。2種や3種旅行業では、財政面で独立起業のハードルが高く、普及にはつながらないということだろう。

ということは、筆者が営んできたSOHOトラベルエージェントとホームエージェントは、似ているようだが若干違う。

しかし、どちらでも良い。いずれにせよ、旅行業界の人材確保という面においては、新たなビジネスモデルが必要だということだろう。

きっかけはコロナ禍による在宅ワークへのシフト

2020年初頭から広がったコロナウイルスにより、世界中がパンデミックに見舞われた。移動は厳禁の感染症において、余暇産業である旅行業は極端に制限された。

そんなとき広まったのが在宅ワーク、またはテレワークだ。

自宅のパソコンから会社のシステムを利用して仕事をし、会議はZoomなどを使ってテレビ会議をすることによって、誰もが「仕事=出勤」ではない新たな働き方に気づいた。

ホームエージェントのきっかけは、在宅ワークにより、誰もがオフィスに出勤して仕事をすることなく、自宅で、好きな時間に仕事をすることができることに気づいたことによる。

もともと、旅行業は机と電話があれば営業できると言われてきた。また、航空端末によって、どの業種よりもいち早くITを取り入れた業界でもある。そのような業界であるならば、ホームエージェントの導入も比較的簡単だろう。

そして、この新しいスタイルなら、すでに業界を離れた人や引退した人にとっても、本業として、あるいは気軽に副業としても営業していくことができる。

冒頭で述べた通り、今、廃業や規模の縮小により、旅行業界の人材が減り続けている。

いくらOTA(オンライントラベルエージェント)が台頭してきても、日本では、本来の旅行業スタイルが必要とされている。言葉の問題もあり、結局日本人は、誰かに自分の旅行のアレンジをしてもらいたいのだ。

そのためには、むしろこれから、ホームエージェントが活躍していく時代になるかもしれない。そのためには、何が必要で、どうすればよいか。

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コンサルティングで質の高い個人旅行の提案へ

ホームエージェントは、在宅による小規模経営の旅行業のため、大手旅行会社のように膨大な旅行客を扱うことはできない。

当たり前だ

当社でも、もし電話が鳴り止まず、ウェブサイトのサーバーがダウンするほど問い合わせが来たら、営業することなど到底できない。取り扱う人数には限界がある。

少ない取扱人数で、自分達が掲げる売上目標を達成するには、1件1件をきめ細かくコンサルティングし、それによって質と利益率双方を上げる旅行を提供することが必要となる。

そうなると、当然団体旅行など取り扱うことなどできない。個人個人のニーズを汲み取り、それを旅行手配に反映させるオーダーメイド型の個人旅行が、ホームエージェントにおける旅行業スタイルだろう。

筆者は、20年前の独立起業時に、すでにこの「団体より個」の考えで営業していこうと考え、実践してきた。当初は、まだ売り上げを上げるなら、大きな団体を取ることが定説とされていた頃だ。

団体旅行は進んで取り扱わず(依頼があればやってきたが)、1名からの旅行手配に全力で取り組む。そして、決して安売りはしない。よく、

「御社ではどれくらい安くしてくれますか?」

という問い合わせがきたが、一切値引き交渉や薄利販売はしてこなかった。それだけ、それぞれの旅行企画立案や手配に、自信を持ってやってきたからだ。

妥協のために手を抜くことなく、質の高い旅行をコンサルティングしていくには、やはりそれなりの経験やノウハウを知った、この業界のOBOG人材が活躍することが必要だろう。

だからこそのホームエージェントなのだと納得する。

ホームエージェントで「団体から個」の旅行スタイルへ

何においても、世界と比べて日本は遅れている。

すでに米国では、ホームエージェントが活躍している。また、他国において、すでに旅行といえば団体旅行ではない。それは、OTA(オンライントラベルエージェント)が一般的になってきたからではない。日本以外では、旅行は「団体から個」に気づいているからだ。

想像してみてほしい、日本でホームエージェントが一般的になり、大手旅行会社など必要なくなる日を…。

新聞広告からは団体旅行の案内が消え、そのため消費者は、自分だけの高品質な旅行を提案してくれるトラベルエージェントを探すことになるだろう。

極端なことを言えば、ホームエージェントの活躍によって団体旅行がなくなり、誰もがコンサルティングされた自分だけの旅行をするということだ。

常々、筆者は「日本から旅行業がなくなることはない」と考えている。ネット中心の購買が進んでも、日本人は個人で旅行を手配することに慣れることはないからだ。

海外旅行において、いまだに機内泊を理解できていない問い合わせがよくある。また、例えば「ローマで3日必要」というお客様は、実際ローマで何泊必要で、自由な日が何日必要かを理解できていないことが多い。

このような日本の旅行消費者にとって、旅行会社は絶対に必要なのだ。

丁寧に、きめ細かくコンサルティングできる旅行会社のスキルは、きっといつまでも必要とされるだろう。そして、それを続けるためには、大規模な団体旅行ではできないこと、消費者の身近にいるホームエージェントがその役割を果たす。

思い出すのは、この業界に入った頃に聞いた言葉、

「医者、弁護士、旅行会社はかかりつけ」

が、今になって実感として理解できてくる。

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