最近、DistroWatchでトップ10内に位置し続けるPop!_OSは、UbuntuをベースにしたLinuxディストリビューションだ。一見何の変哲もなさそうだが、今や本家のUbuntuを抜いてトップ3に迫る勢いだ。それは何故か?を調べるため、今回もクリーンインストールして調べてみた。
Pop!_OSについて
Pop!_OSは、米国のSystem76というコンピューターメーカーが開発した、Ubuntuベースのディストリビューション。この会社のサイトを見ると、確かにラップトップ、デスクトップ、サーバーなどを販売している。そして、販売用のPCにインストールされているのが、このカスタマイズされたUbuntuベースのPop!_OSだ。
AMDとNVIDIAの両GPU(グラフィクス処理ユニット)をサポートしていることにより、ゲームPCとしてセットアップするのが簡単と言われている。近年、e-スポーツが注目されていることもあり、ゲームに特化したOSも注目されるのだろう。
最大の特徴は、Auto-Tiling With Pop Shellというタイル型ウィンドウマネージャだろう(後述)。WindowsやMacにはよく見られる、複数のウィンドウを重ねることなく、タイルのように画面に列挙するシステムだ。例えば、エディタを開きながら動作状況を同時にブラウザで確認できるので、プログラマーなどは助かるだろう。今のところ、他のLinuxディストリビューションでは見たことがない。
デフォルトで暗号化インストールとなっており、ディスク全体をロックすることができる。これにより、他人に自分のPCを勝手に操作される心配がない。ディスク暗号化は、ファイルの読み書きも速くする。もちろん暗号化なしでのインストールも可能だ。
通常のUbuntuによるOSアップデートに加えてローリングアップデートを兼ね備えているので、常に最新の状態で使うことができることもセキュアな一面だ。あわせて、自動ファームウェアアップデートでは、System76ハードウェアのソフトウェア設定からアクセスでき、これらの更新によって、コンピューターに対するセキュリティリスクの脅威を迅速に排除するのに役立つ(公式サイトより)。
元々が開発者向けに開発されたOSのため、アプリケーションは最低限のものしか入っていないが、その分カスタマイズが自由だ。
あくまで公式サイトのトップページに書かれていることだが、これが人気の要因なのだろうか?
インストールは英語のままが鉄則
インストールファイルはPop!_OS 20.10と、20.04LTSの2通りを用意してあり、今回はLTSをインストールすることにした。システム要件は以下の通り。
2GB RAM, 16GB storage, 64-bit processor
さっそくisoファイルをダウンロードの上、USBに焼き付けた上でライブ画面を起動する。しかし、起動後の画面は、何やらおかしい。設定でディスプレイを見てみると、200%になっているので、これを100%に戻してから、インストールを開始する。
インストーラは言語選択が可能だが、ここで日本語を選択すると、何故かインストール完了まで辿りつかない。何度かやってみても状況は同じなのでネットで調べてみると、同様のトラブルにあった人がいてアドバイスしてくれている。そこでは、インストールは英語のまま進め、再起動後に日本語環境を整えるのが良いとのこと。
以下、インストール画面のスクリーンショットを順を追って貼っておく。英語のままだが、特に難しいことはなく、むしろ簡単だ。尚、ユーザーとパスワードの設定は再起動後に行う。
Pop!_OS 20.04 LTSの日本語環境とカスタマイズ
日本語設定
再起動後の画面は見慣れたGnomeデスクトップだ。Welcome画面にて、ユーザー設定、ユーザーパスワードを設定する。それ以外はスキップ。
その後、左上のアクティビティから「System」–>「Language Support」を開く。すぐに不足している言語サポートファイルのインストールが始まる。それが終わったら、「Language for menus and windows」にて、「日本語」を一番上までドラッグして移動させる。次にRegional Formatタブを開き、これを「日本」にして保存。
日本語については、上記作業によりIbus-mozcがインストールされるので、画面右上のIbusセッティングを右クリックし、「日本語(mozc)」を洗濯すれば、日本語入力が可能となる。はずだったのだが、そう簡単にはいかない。
設定の「Keyboard」で表示されている「日本語」以外に、プラスをクリックして「日本語」–>「日本語(mozc)」を選んでおく必要がある。これで再起動すれば、日本語入力が可能となる。
fcitx-mozcが好みの場合は、端末からインストールする必要がある。
カスタマイズ
最初にいつも使っているアプリケーションとして、プリ・インストールされていないSynapticパッケージマネージャとGnome-Tweaksを端末からインストールする。久しぶりの「apt install」だ。
その後、FireFoxにてGnome Shell Extensionsを開き、Floating dockをインストールする。Gnomeデスクトップでは、やはりこれがあるとないとでは大違いだ。
Tweaksでは、拡張機能にてインストール済みのFloating dockの設定を行う。筆者はいつも開きっぱなしの設定にする。また、ウィンドウタイトルバーにて、タイトルバーボタンの最大化、最小化を表示させる。
メールソフトがないので、SynapticパッケージマネージャからThunderbirdと言語パッケージを同時にインストール。Pop!_OSのカスタマイズされたソフトウェアセンター「Pop!_Shop」では、英語版のThunderbirdしかインストールできないからだ。
その他必要なサードパーティのソフトウェア(Google ChromeやクラウドストレージのMEGAなど)は「.deb」形式のインストールファイルをダウンロードし、右クリックで「Eddyでインストール」を選べば、簡単にインストールできる。
Auto-Tiling With Pop Shell
カスタマイズ後、さっそくPop!_OS最大の特徴であるAuto-Tiling With Pop Shellを試してみる。画面右上のウィンドウアイコンをクリックすると、以下画面となる。
ここで「Tile Windows」をオンにすると、開いているウィンドウを重なることなく、自動で並列させることができる。使ってみると、思いのほか使いやすく便利だ。下画像のように左側でエディタのVisual Studio Codeを開き、右側でライブビューイングを開けば、ウェブサイトの編集時は便利だろう。
また、Auto-Tilingの下にある「ショートカット」では、Auto-Tilingと併用すると便利なショートカット集がデフォルトで用意されている。
例えば、ウィンドウの切り替えは「Superキー(多くはWindowsマークのキー)」+「/(スラッシュ)」で以下のような切り替えウィンドウが立ち上がる。アプリの切り替えはすぐにできるし、検索窓でアプリケーション名を打ち込めば、使いたいアプリを起動させることもできる。
まとめ
まだ細かい設定はわからないが、ここまでで既にPop!_OSを利用する価値があると実感する。セッティングさえ済ませてしまえば、Linux初心者にも使いやすい。
ゲームに特化したデュアルGPUサポートとディスク暗号化による処理速度高速化により、Gnomeデスクトップにしては非常に軽く、快適に作業ができる。
起動させるときにディスクロック解除、ユーザログインの2回のパスワード入力が面倒といえば面倒だが、セキュリティ、プライバシーを重視したOSと思えば、これくらいは苦にならない。
Fedoraのような革新的なセキュリティ更新とアップデートも使いやすい。一方Ubuntu系では、DistroWatchの人気ランキングが示す通り、このPop!_OSが初心者にもLinuxヘビーユーザーにも使いやすいOSなのかもしれない。
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