アコギ経験者には「目からウロコ」のクラシックギター

今はもうやめて4〜5年経ったが、15年間クラシックギターとフラメンコギターの両方を教えてくれる教室に通った。

学生時代はアコースティックギターから始め、その後エレクトリックギターに持ちかえてバンド活動に夢中になった。その後社会人になってだいぶ経ったあるとき、クラシックギターの音色に癒やされ、また音楽に浸りたいと感じた。かなり仕事に疲れていたのかもしれない。だから、あまり深く考えずにギター教室に入ることにした。

ブランクはあるがギター歴は長いので、教室で習う程もなく簡単だろうと思っていたクラシックギター。しかし、自分が知っているギターとはまるで勝手が違った。

「目からウロコ」① 左手親指はネックから見えてはいけない

クラシックギターは、メロディー・伴奏を一人で弾く「独奏」が可能な楽器だ。弾くときの姿勢は、椅子に座って左足を専用の足台に載せ、体全体でギターを抱えるようにして持つ。
一方、アコースティックギターやエレクトリックギターは、ストラップでギターを方から下げて立ち姿で弾くなど、自由な演奏スタイルだ。

演奏スタイルからして違うということは理解していたが、ずっと自由にギターを弾いてきた自分にとって、新たに始めたクラシックギターは「目からウロコ」なことばかり。

まず、弦の押さえ方。

観客側から見て、演奏者の左手親指はネックから見えてはいけないと注意された。

アコースティックギターやエレクトリックギターは、有名なギタリストたちの演奏方法を見てコピーすることで覚えてきた。なので、独学ではあるが割と自由な演奏スタイルだったと思う。クラシックギターと比べてネックが細く、握るようにコードを押さえれば、ある意味当然のように親指は飛び出て見える。
さらに、コードによっては親指で6弦を押さえて演奏したこともあったので、親指がネックから出ていることが正しいとさえ思っていた。

しかし、クラシックギターは事情が違う。

正しい弦の押さえ方は、親指以外の4本は指板の上に指先を立てて置くように「軽く」押さえ、親指は腹(指紋のある部分)をネックの裏側の中央部に添え、親指以外の指の動きに合わせてスライドできるようにしておく。
これにより、親指以外は指板の上で自由に動かすことができる。親指は、腹の部分だけをネック裏側中央で添えているだけなので、観客側からは見えないはずだ。

アコギ経験者は、これに随分悩まされた。レッスン中、少し油断するとすぐに、

「また、親指がぴょこぴょこ飛び出ている!」

と、我が先生からお叱りを受ける。結局、訳あってギター教室をやめるまでこの癖は治らなかった。

「目からウロコ」② チューニングは和音で

全ての弦楽器は、チューニングがもっとも大切だ。

ギターの場合、最初に5弦12フレットのハーモニクスを440Hz(「ラ」または「A」)の音叉の音と共鳴する様に合わせる。5弦の音が合ったらその他の弦を、各弦の5フレットのハーモニクスで合わせていく。アコギを始めた時からずっと、筆者は音叉派だ。

その後電子チューナーが登場し、今ではスマホアプリでもあるくらいだから、音叉でチューニングする人はあまりいなくなったように思う。

ところが、ギター教室のおばあちゃん先生のチューニングの仕方は違った。

最初に音叉で5弦を合わせるところまでは同じだが、その後は5弦を中心にオクターヴの和音で合わせていく。
最初に触れた通り、「独奏」が基本のクラシックギターは自身のギターが正しい和音を奏でているかどうかが大事になる。だから、極端なことを言えば音叉で合わせることなくても、6本の弦が正しい和音を奏でればそれで良いのだ。

もちろん、合奏のときはそうはいかない。それでも、教室の誰もが電子チューナーに頼ることはなかった。

ちなみに、教室ではチューニングの際440Hzと444Hzの2本の音叉を使用していた。そもそも国際基準値とされた440Hzが基本だと思い込んでいた筆者は、そのことの方が「目からウロコ」だった。弦を張り替えたばかりの時はすぐに緩むため、少し高めの444Hzは何かと重宝すると、後で知った。




「目からウロコ」③ あちこち叩くフラメンコギター

筆者が入ったギター教室は、スペインへ音楽留学したこともあるおばあちゃん先生がクラシックとフラメンコの両方を教えてくれる、数少ないギター教室だった。
教室ではギターを貸し出してくれるので、自分のギターを持って通うことはなかったが、両方習うならやはりどちらも持っていたいと思うようになる。

最初はコダイラの入門用クラシックギターを購入した。初心者用としては、スプルーストップが美しいギターだ。

しかし、この教室ではクラシックの楽曲とフラメンコの楽曲の両方を少しずつ練習するようなレッスンだった。家に帰れば、習ったことを復習するため、購入したばかりのクラシックギターでフラメンコも弾く。

少しでもかじった人ならわかると思うが、フラメンコギターは単に弦を弾くだけでなく、表面板(トップ)を指で叩く「ゴルぺ」という奏法があり、それで表面が傷つかないようにゴルぺ板というプラスチック板が貼られている。激しい演奏にも耐えられるようにギター本体を守るためだ。

教室に通い始めてすぐに、入門用とは言え10万円ほどのギターを少ないサラリーから捻出したばかりなので、そうそうフラメンコの練習のために新しいギターを買うわけにはいかない。

結局フラメンコギターを購入することができたのは、通い始めて5年も経った頃だった。なので、筆者のクラシックギターの表面はゴルぺの跡がだいぶついている。

ちなみに、フラメンコに限らずクラシックギターにも「タンボーラ」といって、表面板を指の腹などで叩く演奏法がある。どちらも「独奏」が基本の楽器なので、リズムやアクセントをつけるための打楽器を兼ねているのだ。
ドラムやベースがリズムを作ってくれるバンドとは全く違う、まさに「目からウロコ」な演奏方法だ。

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もともと木の香りが好きなこともあり、ギターを始めた時はエレクトリックギターではなくアコースティックギターから始めた。表面に見える丸い穴、それがサウンドホールで、ここからそのギターの持つ様々な木の香りが漂う。クラシックギターとフラメンコギターを教える先生の教室に通って15年、それ以来いろいろなギターを弾いてみた。現在自分で所有するギターはクラシックが1本、フラメンコが1本だけだが、いずれも演奏する曲が最大限生かされるよう、ギターのタイプによって材質が選ばれている。今は教室に通っていないが、ギターの木の香りと音楽に浸る毎日を送りたく、これからギターについてあれこれ書いていこうと思う。

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