日本国内において圧倒的シェアのWindows 10、そのサポート終了が2025年10月に迫ってきている。
これはWindows XPやWindows 7問題の再来だ。
最新のバージョンにアップグレードするか、それとも新たなOSに乗り換えるか?
Windowsを使っていると必ず起きるこの問題を解決するのは、やはりLinux。
久しぶりのLinuxレビュー記事再開の今回は、Windowsに限りなく近いZorin OSを取り上げたい。
Windows 7問題から5年、再び来たWindowsサポート終了問題
相変わらず日本でのWindowsの利用率は高い。2025年3月現在、国内のOSのシェアでは
Windows: 71.66%
OS X(Mac): 13.65%
Linux: 3.98%
Chrome OS: 1.85%
となっている(Qbook調べ)。ほとんどは官公庁や企業で利用しているからだと推察するが、意外なのはChrome OSがLinuxより低いこと。あれほど鳴物入りで登場したOSだが、思ったより使っている人が少ないことには驚いた。
さて、日本で7割利用されているWindowsだが、バージョンごとのシェアになると、
Windows 11: 45.17%
Windows 10: 50.95%
(以下省略)
となり(Qbook調べ)、Windows 10を利用している人が、Windows利用者全体の半数を占めている。
そのWindows 10は、2025年10月にサポート終了となる。
あれ?これって、デジャブ?
2020年のサポート終了当時、Windows 7がシェアの大半を占めていた時も、サポート終了によって社会問題となった。日々新しいウイルスやハッキングによる危険からパソコンを守るため、提供する企業(WindowsはMicrosoft)がOSを保護するためのサポートをしている。
しかし、OSのバージョンが変わることによって、古いバージョンのOSはこのサポートがなくなってしまう。だから、最新のOSにバージョンアップすることが必須なのだ。
ところが、Windows 7の時は、
「使い勝手がいいから」
「最新じゃなくても使えればいい」
といった理由(おそらく)から、バージョンアップをしない人がかなりいた。その結果は利用している本人にしかわからないが、気付かぬうちにウイルスに感染していながら使い続け、そこから外部にメールなどで発信すると他人にも迷惑をかけ続けることにつながる。
特に面倒なのは企業だ。
社員の数だけパソコンがあるような会社では、バージョンアップの作業は膨大だろう。そのため、サポートが終了しても7を使い続ける企業が多数あった。上述のQbook調べによると、2025年2月現在でも、7のシェアはまだ1.23%もある。
今回のWindows 10から11へのバージョンアップも、利用者すべてがバージョンアップをしない限り、同じような問題が起こるだろう。上述の通り、国内の全パソコンのうち7割がWindows、そしてその半数がWindows 10を利用しているのだ。
このパソコンがバージョンアップをしないまま使い続けたら、万が一仕込まれたウイルスは、そのまま外部へダダ漏れする。
「それならすぐにバージョンアップすればいい」と思うのも当然だが、上述の通り利用している大半は企業なので、その企業が重たい腰を上げない限り、バージョンアップは進まない。
このバージョンアップは無料だが、システム要件を満たしたパソコンでないとできない。その要件は以下のとおり。
プロセッサ:1 ギガヘルツ (GHz) 以上で 2 コア以上の64 ビット互換プロセッサまたは System on a Chip (SoC)。
メモリ:4 ギガバイト (GB)
ストレージ:64 GB 以上の記憶装置。詳しくは「Windows 11 を最新状態に保つための空き領域の詳細」をご覧ください。
システム ファームウェア:UEFI、セキュア ブート対応。
TPM:トラステッド プラットフォーム モジュール (TPM) バージョン 2.0。
グラフィックス カード:DirectX 12 以上 (WDDM 2.0 ドライバー) に対応。
ディスプレイ:対角サイズ 9 インチ以上で 8 ビット カラーの高解像度 (720p) ディスプレイ。
(Microsoft公式ページより引用)
Windows10は、これよりも低いシステム要件でも動作していたが、Windows 11はより条件が高くなっている。ちなみにWindows 10のシステム要件は以下の通り。
プロセッサ:1 ギガヘルツ (Ghz) 以上に対応したプロセッサまたは システム・オン・チップ (SoC)
メモリ:32 ビット版では 1 GB、64 ビット版では 2 GB
ハード ドライブのサイズ:32 ビット版 OS では 16 GB、64 ビット版 OS では 32 GB
グラフィックス カード:DirectX 9 以上 (WDDM 1.0 ドライバー) に対応
ディスプレイ:800×600
(Microsoft公式ページより引用)
Windows 10には、まだ32ビット版があったのも驚きである。
Windows 11にバージョンアップができないパソコンであれば、対応可能なパソコンに買い替えなくてはならない。企業だったら、それだけで膨大な費用になるだろう。
Windows問題を解決するLinuxディストリビューション、Zorin OS
さて、ここからが本題、「パソコン買い替え以外の方法は?」というと、Windowsから違うOSへの変更という方法がある。
例えば、OSシェアの3番目にあったLinux。
Linuxは、ほんの一部を除き無料で利用できるオープンソースソフトウェア(OSS)。世界のOSシェアでもLinuxは4%ほどと低いが、サーバーやスーパーコンピュータの分野では高いシェアがある。
Linuxの利点は、
- 無料で利用できる
- スペックが低くても快適に動作する
- セキュリティ面で安心
- パソコンのカスタマイズができる
- 対応するアプリケーションも無料
という点だ。つまり、Linuxは、個人用PCから企業向けのサーバーまで、幅広い用途に利用できる柔軟なOSであることがわかる。
実際にデスクトップPCにインストールするLinux OSのことを「ディストリビューション」といい、その種類は星の数ほどあり、個人で利用するパソコンなら、気分でディストリビューションを変えることだってできる。
企業での導入は難しいかもしれないが、個人利用なら、システム要件を満たさないためバージョンアップができないパソコンは、ぜひLinuxへと変更してみることをお勧めする。
では、星の数ほど多いディストリビューションから、自分にあったディストリビューションを選ぶには、どうすれば良いか?
ディストリビューションの人気ランキングや各詳細が調べられるDistroWatch.comから選んでも良いだろう。しかし、初めてLinuxに触れる人には、そこから選ぶのは困難だ。
そこで、今まで使っていたWindowsに見た目(デスクトップ)や操作性が近いディストリビューションを選ぶのが良いだろう。
今まで、数多くのLinuxディストリビューションを自分のパソコンにインストールしながら検証してきた筆者が、
「これなら違和感なくLinuxに移行できる」
とお勧めするディストリビューションは、Zorin OSである。

Zorin OSは、Linuxディストリビューションの中でも、Windowsに近いデスクトップと操作性、豊富な代替アプリケーションが利用できる点で、他のディストリビューションより抜きんでている。そして、公式ページでも述べている通り、15年以内のパソコンなら、このOSが利用できるため、環境への配慮として電子廃棄物を削減できる、サスティナブルなOSだ。
当ブログでも、5年前に一度、古いパソコンにインストールして検証しているので、以下記事をご覧いただきたい。
2025年現在、Zorin OSでは、以下3種類のOSを用意している。
- Pro(有償版)選べる6種類のデスクトップ(mac OS、Windows 11とクラシックバージョン、Chrome OSなど
- Core(無償版)スタンダードなOS、デスクトップはWindows、Touch、Windows List、GNOME Shellのみ。
- Education(無償版)学習用OS
通常はCoreを選べば良いだろう。ただし、Educationを除き、いずれも64ビット版のみなのでご注意を。
以前検証した時にあったLiteは、バージョン19以降リリースされなくなる予定。理由は、標準デスクトップ環境への最近の最適化により、Zorin OSのLite版以外のエディション(Core、Pro、Education)は、古いパソコンでも高速でリソース効率の高いコンピューティングエクスペリエンスを提供できるようになったため。つまり、Liteでなくても古いパソコンに対応できるようになり、Liteをリリースする意味がなくなったということ。
WindowsのパソコンにLinuxをインストールする方法は、少し古いが以下の記事がお役に立てると思う。
簡単に手順を説明すると、
- 万が一のためにWindowsのバックアップ
- Linuxディストリビューションのインストールファイルをダウンロード
- インストールファイルで起動ディスクを作成
- 起動ディスクでLinuxをインストール
の4段階だ。ここからは、VirtualBoxにZorin OS Core(バージョンは17.3)をインストールして、実際どのような感じなのかを確かめたいと思う。
Zorin OS Coreのシステム要件は以下のとおり。
CPU:IntelまたはAMDの1GHzデュアルコア-64ビット
RAM:1.5GB以上
ストレージ:15GB(Core)
ディスプレイ:1024×768の解像度
USBフラッシュドライブ:4GB
最近のLinuxディストリビューションは、どれもインストールがとても簡単になってきている。起動ディスクでPCを立ち上げると、Live画面になり、とりあえず使い勝手を確認することができる。
同時にインストーラが表示され、画面の指示に従っていけばインストールが完了する。Zorin OSは日本語にも対応しているので、インストールで特に難しいことは何もない。以下、インストール画面を順にスクリーンショットで撮っておいた。
アプリケーションはどうする?
当たり前のことだが、いくらWindowsに似ていようと、LinuxはWindowsとは違う。
今まで使えていたアプリケーション、例えばWordやExcelのMicrosoft Officeは、当然のことながらLinuxでは使うことができない。それは、Zorin OSにおいても同様である。
では、WindowsからLinuxに変えたら、今まで作成したファイルをそのまま使うことはできないのか?
その答えは「No」だ。
およそ大半のWindowsユーザーが使っているアプリケーションは、
- ブラウザ(EdgeやGoogle Chromeなど)
- Officeアプリ(Word、Excel、Outlook、Power Pointなど)
- Adobe Acrobat(PDF編集)およびAdobe Reader(PDF閲覧)
- Photoshop(画像)やIllustlaror(グラフィック)
あたりだろう。
上記のアプリケーションについて、Linuxでは代替アプリケーションを多数用意している。そして、ほとんどは互換性があるので、今まで作成したファイルを問題なく開けて編集することができる。
1つ1つ、紹介していこう。
ブラウザ
インターネットは、もはやどのOSでも共通だ。Microsoft独自のブラウザ、Edgeでさえ、今はLinuxで利用することができる。
試しに、Zorin OSにEdgeをインストールしてみた。
Google Chromeだって、ソフトウェアからインストール可能だ。
Officeアプリ、PDF編集
仕事上で一番重要なのは、Officeアプリだろう。しかし、心配することはない。
以前は体裁が崩れたりすることはあったが、現在Linuxで利用できるOfficeアプリはMicrosoftと完全に互換性があり、体裁も崩れることはほとんどない。多少修正は必要かもしれないが、それも軽微だ。
数あるOfficeアプリの中で、最もMicrosoft Officeに近いものといえば、Only Officeだろう。インターフェースはもちろんのこと、ファイルの拡張子もデフォルトでDOCX(Word)、XLSX(Excel)、PPTX(Power Point)で保存される。
さらに、Adobe Acrobatの要素となるPDFの編集や記入可能なPDFフォームの作成が可能だ。

また、多くのLinuxディストリビューションで標準搭載されているのが、LibreOffice。筆者も普段はLibreOfficeを使用している。こちらもMicrosoftと互換性があり、体裁もほとんど崩れることがない。さらに、Baseというデータベースも利用できるので、個人的にはとても助かっている。
OnlyOfficeとLibreOfficeのどちらを選ぶかは、個人の好みになるだろう。パソコンの容量があれば、両方入れておいても良い。
メーラー
日本ビジネスメール協会によると、MicrosoftのOutlook利用率は60.01%と非常に高いことがわかる。しかし、プライベートにおいては、GoogleのGmailの利用率も6〜7割程度と考えると、もはやメーラーをパソコンにダウンロードして利用する時代ではないのかもしれない。
Outlookに近い、Linuxで利用できるダウンロード型のメーラーといえば、Thunderbirdがある。インターフェースもOutlookに近く、スケジュール管理(カレンダーやTodoなど)もでき、Outlookから移行できる点で優れている。
画像・映像編集
相変わらずAdobeのPhotoshopやIllustratorの人気は高いが、もはや画像編集の定番といえば、GIMPだろう。つい最近、7年ぶりに大型アップデートをしたため、使い勝手がぐんと上がった。

グラフィックについても同様、Inkscapeが代表格となっている。
GIMPもInkscapeも元々はLinux向け、今はOSを選ばないアプリケーションとなっている。
そもそも、現在ではひとつのOSに限定したアプリケーションでは使ってもらえなくなってきている。そして、Linux同様オープンソース・ソフトウェア化して、無料で、誰でも、どのOSでも利用できることがアプリケーションの定義となりつつある。
Windows問題解決のまとめ
すでに手元にパソコンがあるのなら、もはやOSやオフィスアプリのアップグレードのたびに無駄なお金を払う必要はない。
デジタル分野では、すでにオープンソース・ソフトウェアが中心になりつつある。
WindowsやMacに必要以上にお金をかけることなく、グローバルスタンダードなOSを使っていくことが便利でサスティナブルであることを理解していただきたい。
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