Linuxでできることのひとつに、サーバー構築がある。というより、サーバーを構築できることが、Linuxの最大の利点かもしれない。
大げさに言えば、世の中のITというものは、ほとんどLinuxで動いている。
サーバーも同様。
コストをかけることなく、さまざまなサーバーを自分で構築できるなら、試さない手はない。
そこで、古い32-bitのPCを使って、いちからサーバー構築をしてみることにした。
Linuxでできるサーバーの種類
ひとくちに「サーバー」といっても、いろいろある。以下に列挙してみよう。
- Webサーバー:Webサイトのファイルが入っているサーバー
- メールサーバー:メールを送受信するためのサーバー
- FTPサーバー:クライアントとサーバーの間でファイルをダウンロード・アップロードする
- ファイルサーバー:ネットワーク内の他のユーザーとファイルを共有する
- データベースサーバー:動的なWebサイトなどで使われるデータベースサーバー
- プリンタサーバー:複数のクライアントがネットワークを通してプリンタを利用する
- DHCPサーバー:IPアドレスを持たないクライアントに一時的にそれらの情報を付与するサーバー
- DNSサーバー:IPアドレスとドメインを紐づけて管理するサーバー
- プロキシサーバー:セキュリティと負荷軽減のための中継サーバー
しかし、パソコンをサーバーにしたからといって、1台でなんでもできるわけではない。
例えば、Webサーバーとデータベースサーバーを混在したパソコンで、Webサーバーに多くのアクセスが集まった場合、サーバーに多大な負荷がかかる。そうなると、いわゆる「サーバーダウン」となり、アクセスできなくなってしまう。
1台のサーバーには、目的をひとつに絞って使用することが大切だ。
そうなれば、サーバーを構築する前に、
「サーバーを構築してしたいこと」
を決めておかなければならない。
今回構築するサーバーは、本格的な運用ではない。Linuxでできることのひとつとして、サーバーを構築することができることを自分で確かめたいためだ。
どの目的でも良いが、一般的に「サーバー」といって思い浮かべるものということで、Webサーバーを構築してみることにした。
サーバー構築のためのPCスペック
Linuxの良さのひとつに、古い、低スペックのパソコンでもLinuxをインストールすることによって、再度使用可能にできることがある。
それなら、サーバーを構築するパソコンも、低スペックで良いのではないか?
そう思い、いつも軽量Linuxを検証するための古いThinkPad X41で試してみることにした。そのスペックは、
- アーキテクチャ:32-bit
- プロセッサ:Intel Pentium M processor 1.50GHz
- メモリ:924MiB
- ディスク容量:40GiB
というもの。
ところで、サーバー構築のための推奨スペックというものはあるのか調べてみたが、ネット上で明確な回答は得られなかった。
しかしながら、用途によってスペックは変わってくるのだろうということは理解できた。
例えば、ファイルサーバーならディスク容量が大きいもの、Webサーバーやデータベースサーバーなら、その処理能力からCPUやメモリが必要になってくるだろう。
また、32-bitか64-bitの違いにもよる。
サーバー構築においては、この違いはさほど関係ないという記述はあるが、やはり64-bitの方がアドバンテージが高いということには変わりはない。
今回は明らかに実験で、低スペックのパソコンでどれだけできるか、その可能性を探るためだ。32-bitに対応したサーバー用ディストリビューションを使用すれば良いだろうと踏み、そのまま進めることにした。
サーバー構築に適したディストリビューション
サーバー構築に適したディストリビューションは、どのようなものがあるか?
一般的には、RHEL、つまりRedHat系ディストリビューションが安定性や実績面で定評がある。本家RedHatは有償のため、企業以外のほとんどの個人ユーザーは、今までCentOSをサーバーのOSとして利用してきた。
しかし、Linuxサーバーといっても、要はOSをインストールしたパソコンだ。
RedHat系でなくても、安定したディストリビューションであれば、問題はない。
例えば、UbuntuやDebian、Linux Mintといった知名度の高いディストリビューションは、日本語サイトもありサポート体制が充実している。また、インストールファイルも、無駄なアプリケーションが入っていないサーバー用ファイルを用意してくれている。
今回は32-bitのパソコンを使用するため、対応しているディストリビューションとして、Debianを選択した。
Debianは、セミ・ローリングリリース、LTS、軽量が特徴のUnix系の代表的ディストリビューション。常に32-bit版を用意してくれているところがうれしい。
つい最近、最新バージョン11 Bullseyeがリリースされたばかりだ。
さっそく、このDebian 11 32-bitを、ThinkPad X41にインストールすることにした。インストールファイルは、Debian JP Projectより、PC/サーバー用netinstイメージを選んだ。ウェブサイトによると、
「netinst」イメージは、主要なデータをインストール中にネットワーク経由で入手します。
最小限のサーバー環境を作りたい方などは、こちらを利用すると無駄が無くて良いでしょう。
とのこと。
インストールといっても、通常のLinuxとなんら変わらない。インストール方法も64-bitと変わらないので、以下をご参照いただきたい。
注意する点は、インストーラ途中の「ソフトウェアの選択」だ。
ほとんどの人は、サーバー利用の際CUIで操作するのだが、初めてのサーバー構築で自信がないため、デスクトップ環境はインストールしておくことにした。また、始終真っ黒な画面で進める際、スクリーンショットの仕方もわからない。デスクトップ環境が整っていれば、スクリーンショットは可能だ。
なので、この画面にて、できるだけ負担がかからないXfceを選択しておき、その他「Webサーバ」と「SSHサーバ」にチェックを入れておいた。
今回はここまで。次回は、初期設定について。
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