WordPressとは、世界中で最も利用されているコンテンツ・マネジメント・システム(CMS)。プログラミングの知識がなくても、ブログやウェブサイトを制作することができる無料ツールだ。
つまり、WordPressを利用すれば、専門家に依頼しなくても企業やお店のウェブサイトを自分で制作することができる。
それも、無料で(後述のドメイン取得料やレンタルサーバー代を除く)。
ここでは、SNSではなく、企業やお店の本格的なウェブサイトを制作するための基本をご案内しよう。
なぜSNSのホームページではダメなのか?
最近、インスタグラムをホームページとして利用しているお店を見かける。
若い世代を中心に利用者が多く、拡散力があり、検索エンジンでググるよりハッシュタグで検索することができるなど、スマホ世代にはウェブサイトよりも使いやすいのだろう。
しかし、これにはデメリットもあることを理解しておこう。
なぜなら、SNSはログインして閲覧することが前提のため、そのアカウントを持っていない人には、必要な情報が届かない。
また、映える画像は数多くあっても、ユーザーが必要な情報を入手するには、サイト内をあちこち移動しなくてはならない。そもそも、インスタグラムにはサイトとしての機能はないので、他のページにジャンプするという概念がない。
こんなお店や企業は、早々にSNSとは別のウェブサイトを用意した方が良い。
ウェブサイトをメインのホームページとし、あくまでSNSは新着情報などの拡散に利用する、というのが、一般的な企業のウェブ戦略であるからだ。
例えば、お店の営業時間や定休日、メニュー一覧、店舗へのアクセス、問い合わせなど、画像とは別の必要情報は、ウェブサイトの方が表示しやすい。そして、ログインしなくても閲覧できるので、あらゆる世代・ユーザーのアクセスが可能だ。
おそらく、SNSをホームページにしているお店の多くは、
- 初期費用や運営費用がかからない
- お店のターゲットとしている世代への拡散力がある
- 普段からスマホ利用が中心
- 反対にWeb知識があまりない
といった理由から、手軽にウェブサイト代わりとなるSNSを利用しているのだと思われる。
しかし、もし無料に近いコストで制作でき、ネットに公開した後も管理しやすいウェブサイトがあれば、迷わずウェブサイトの方を選ぶだろう。
ホームページ制作を依頼する場合の相場
では、一般的にホームページ制作を外部に依頼する場合の相場は、どれくらいなものだろうか?
一口にホームページと言っても、トップページだけの簡単な、いわゆる「ペライチ」といったものから、大企業の本格的なウェブサイトまで様々ある。
さらに、ホームページは作りっぱなしで完了ではなく、新商品発表のためのページ追加や更新、さらにはアクセスアップやSEO対策(後述)など、のちのちの管理も制作の一部として費用が計上される。
それを考慮すると、一概に横並びで比較できるものではないが、テンプレートを使用した簡単なサイトなら3〜10万、大規模サイトやデザインにこだわれば100万円単位になる。
このような費用を、小規模の企業や店舗で捻出するのは容易ではない。
しかし、オープンしたてのお店などは、まずはお店の情報を知ってもらうことが必要で、そのためにはSNSだけではなく、ウェブサイトは欠かせない。
そのための強力なツールが、コンテンツ・マネジメント・システム(CMS)、そしてその代表がWordPressなのだ。
WordPressのメリット・デメリット
現在、CMSは国内外でかなり多くの種類があり、どれを選んだら良いかわからないくらいだ。
その中で、WordPressはCMS世界シェアNo.1、なんと64%にもなる(2022年9月時点、W3Techs調査)。
もちろん、HTMLとCSSだけでプログラミングされたウェブサイトも数多くあるが、単純にいっても世界中の約半数くらいのウェブサイトが、WordPressで制作されているといっても過言ではない。
それは、デザイン性に優れたウェブサイトを制作することができ、管理もしやすいということの表れだろう。日本国内の主な企業も、WordPressを利用して公式サイトを制作している。
では、このように世界中で利用されているWordPressのメリット・デメリットは、どのようなものがあるだろうか?
メリット
- 無料で利用できる
- HTMLとCSSを知らなくてもWebサイトが作れ、記事の更新・管理が簡単
- 豊富なテーマとプラグインがあり、デザイン性に優れたサイトが作れる
- オープンソースソフトウェア(OSS)のため、世界中で日々開発・修正が行われている
- 知識がなくてもSEO対策が施せる
WordPressのテーマとは、あらかじめデザインやサイト全体の構成や機能までセットアップされたテンプレートのこと。
無料のものから有料のものまで数多くあり、自身の考えていたウェブサイトの構想にあったテーマを利用すれば、すぐに基本のサイトは出来上がるようになっている。
また、プラグインとは、WordPressに様々な機能を追加してくれる、いわばWordPress内でのアプリのようなものだ。プラグインには、
- SEO対策
- セキュリティ対策
- 表示速度アップ対策
といった対策面のものから、
- 人気記事表示
- サイトマップ自動生成
- 問い合わせフォーム作成
といった便利なものまである。
通常のウェブサイトは、HTMLとCSS、さらにはJavaScriptを組み合わせて、自分でプログラム構文を書かなければならないが、プラグインをインストールすればその必要はない。
ただし、あまり多くのプラグインを導入すると、プラグイン同士が干渉して不具合を起こすこともあるので、最低限に留めておくことが必要となる。
⒌のSEO対策に関しては、WordPressを適切に使用していれば、特別SEO対策を行わなくても良いくらい、よくできている。
だが、「SEO対策とは何か」といったあらましは知っておいた方が良い。
【参考】
Google検索エンジン最適化(SEO)スターター ガイド
デメリット
- WordPress自体は無料だが、別途ドメイン代、サーバー代がかかる
- サポートがないため、エラーが起きた時は自分で問題を解決しなければならない
- 世界的なシェアのためハッカーに狙われやすく、セキュリティ対策を自分で行わなければならない
- HTMLとCSSを知らなくても良いが、最低限のWeb知識は必要
オープンソースソフトウェア(OSS)であるがゆえ、エラーやセキュリティ対策など、必要なことは自分で解決が基本となる。
しかしながら、国内でもWordPress利用者は圧倒的に多く、そのため問題解決のヒントはウェブ上にゴロゴロ転がっているので、サポートの窓口がなくてもおおかたの問題は解決できるだろう。ただし、その時には⒋に書いた通り、多少のWeb知識が必要になるということだ。
また、一般的にWordPressはECサイトには向いていないとされている。
なぜなら、セキュリティ面で不安があることや、ネットショップとしての機能実装が難しい、限られた決済方法といった理由から。
だが、WordPressのプラグインを利用すれば、コストをかけることなくネットショップを作ることができる。
ECサイト向けかどうかは、制作する人によってメリットにもデメリットにもなるということだ。
制作前にサイトに何を掲載するかを決めておこう
WordPressの特徴やメリット・デメリットを理解したからといって、まだ「さっそくWordPressをインストールして制作開始」というわけにはいかない。
どんなウェブサイトでも、事前にサイト全体の構想を決めずに制作することはできない。まずは、ドラフトとなる構想を紙にでも書いてみよう。
一般的なウェブサイトは、企業やお店の情報として以下のページを掲載している。
- トップページ
- 会社概要またはプロフィール
- プライバシーポリシー
- お問い合わせフォーム
- サイトマップ
企業やお店によって異なるが、これ以外に商品案内のページとか、料金表など様々なページが追加されてウェブサイトとなるので、最低限上記は構想として揃えておこう。
次に、上記情報ページを含めた各ページをツリー状の構造で構成し、グローバルナビゲーションの構想を作っておく。
上記で案内した「Google検索エンジン最適化(SEO)スターター ガイド」に記載されている、ナビゲーション構造のように、カテゴリーごとに掲載したいページを分ける。
ウェブサイトが完成した時、この構造がグローバルナビゲーションやパンくずリストによって表示され、訪れたユーザーが、サイト内をわかりやすく移動することができるようになる。
ウェブサイト制作で用意するもの
実際にWordPressでウェブ制作をしていくには、別途以下が必要となる。
- 独自ドメイン
- レンタルサーバー
これらを用意しなければ、WordPressをインストールしてウェブサイトを制作しても、何もできないも同然だ。
独自ドメイン
独自ドメインとは、Webサイトのネット上での住所のこと。ブラウザのアドレス欄に表示される、企業やお店のウェブサイトのURLと考えれば良い。
独自ドメインは、ドメイン取得サイトで簡単に取得できる。
ドメインには「取得費用(新規登録)」と「更新費用(年単位)」の2つの費用がかかるので、この費用がリーズナブルなドメイン取得サイトを選ぶのが良い。
主な取得サイトは、
- お名前.com
- ムームードメイン(GMOペパボ)
- Xserverドメイン
など。
また、これらドメイン取得サイトはレンタルサーバーも扱っているので、独自ドメインとレンタルサーバーを一緒に用意することができる。
レンタルサーバー
WordPressであれHTMLであれ、制作したウェブサイトのデータをWebサーバーにアップロードして、初めてホームページがインターネット上に公開される。
そのWebサーバーをレンタルするのが、レンタルサーバー。
独自ドメインの箇所で紹介した各社は、同時にレンタルサーバーも取り扱っているので、契約は簡単だ。
いずれもWordPressに対応していて、WordPress簡単インストールといったツールを用意している。レンタルサーバーを契約したら、管理画面上からWordPressのインストールができる。
レンタルサーバー選択のポイントは、値段だけではない。
WordPressを構成するPHP(データベース)の処理速度、メモリ容量、データ転送量を考慮して選択することがベター。上述の3社では、Xserverが最も速度、容量、転送量において優れている。しかし、値段では最もお高い。
ちなみに、このブログはドメインをGoogle Domainsで、レンタルサーバーはGMOペパボのロリポップを使用している。ドメインについては、当初Google Bloggerを利用していたため、同じGoogleのサービスを利用して取得した。
ロリポップは、さまざまな料金プランや各種ツールを用意していながら、速度、容量、転送量においても申し分なく利用できている。
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