フラメンコギターの基礎

フラメンコギター イメージ

誰でも手軽に始められるアコースティックギターとは違い、クラシックギターやフラメンコギターは難しいと思われがちだ。しかし、なんでも極めようとすれば、その道は簡単ではない。アコースティックギターも、山崎まさよしや押尾コータローの域まで極めようとすれば難しいのと同じことだ。
この記事は、フラメンコギターを弾いてみたいと思い立った人に、極めるまでは行かずとも弾ける様になるその手伝いとなるように、筆者が習ったことを少しずつ文字にしていこうと思う。

フラメンコギターの歴史1〜感じる音楽

何を始めるにも、その歴史や背景は必要だろうと思い、まずはフラメンコがどのように世界に広まったかについて記しておく。

フラメンコは、南スペインとアンダルシアのフォークミュージック(民俗音楽)で、 長い歴史とともに発展してきたオリジナル・アートだ。「フラメンコ」という言葉の由来については諸説あるが、今日最も広く受け入れられているのは、ジプシーのスラングであるflamenciaとflamanの元となる、英語で「炎」を意味するflamaに由来する。
フラメンコは、ボーカルに重点を置いたカンテ・フラメンコ、ダンスに重点を置いたバイレ・フラメンコ、ギター演奏のフラメンコギターの3種に分けることができる。ただし、オリジナルのフラメンコはクアドロ(絵画またはフレームの意味)・フラメンコとして知られ、歌、ダンス、ギターが1つのアートとして組み合わされたものである。
また、フラメンコは「Hay Que Sentir(「感じなければいけない」の意味)」、つまり「知」ではなく「感じる」音楽だと言われている。奏者、ダンサー、観客が1つに溶け込むことで、フラメンコの真の本質が認められるのが理想である。

情熱と悲哀を表現するフラメンコは、数百年前にインドからイベリア半島最南端のアンダルシアにやってきたジプシーによってもたらされた。スペインの歴史的中心地であるアンダルシアは、様々な国によって数多くの侵略を経験した。中でも、この地域の文化に大きな影響を与えたのは、中世のモロ(ムスリム)文化だった。

これらの侵略による圧力のもと、遊牧民だったジプシーは1440年代にこの地に移住し始めた。フラメンコのスタイルが形成されたのは、まさにこの時期だ。歌と踊りは代々ジプシーたちの家族間で受け継がれ、また先住民から学んだ新しい歌と踊りがジプシーのレパートリーに追加され、時間の経過とともに徐々に独自のスタイルへと変わっていった。やがて、アンダルシアのジプシーはカルロス3世(1759-1788)から市民権を与えられ、スラム街に定住するようになった。

ジプシーの絶望と欲求不満を表現する歌は、カンテ・ホンドCante Jondoまたはカンテ・グランデCante Grandeと呼ばれていた。このカテゴリーにはカーニャCañas、ポロPolos、シギリージャiguiriyas、セラーナスSerranas、ソレアレスSolearesがある。ギターの伴奏がない曲はカルセレラスCarceleras、デブラDebla、マルティネーテMartinetes、トナTonasだ。これらはすべて、18世紀から19世紀初頭の主なフラメンコ・レパートリーを代表している。

ティオ・ルイス・エル・デ・ラ・ジュリアーナ(Tio Luis el de la Juliana:1760〜1830)、エル・プラネタ(El Planeta:1758〜1860)、ディエゴ・エル・フィオール(Diego el Fiol:1800〜1860)は、この時代を代表するフラメンコ・ギタリストだ。
フラメンコ の歴史において重要な出来事は、グリンカGlinkaというロシアの作曲家が1845〜1847年にスペインを訪れ、そのとき偶然にグラナダでジプシー・ギタリストのフランシスコ・ロドリゲス・ムルシアーノ(F. Rodriguez Murciano:1795〜1848)の演奏を聞いたことだ。グリンカはムルシアーノの演奏に非常に感動し、そこに座り込んでこのギタリストのリズムとメロディーに注目した。
今日我々が知っているフラメンコギターの歴史は、グラナディナスGranadinas、マラゲーニャMalagueñas、ロンデーニャRondeñasがレパートリーに追加された19世紀にまでさかのぼる。

フラメンコギターの歴史2〜カフェ・カンタンテ以降

19世紀半ば、ジプシー以外の民衆はジプシーたちの歌、ダンス、ギター演奏に興味を持ち始めた。当時、ジプシーたちが演奏するカフェ・カンタンテCafés Cantantesと呼ばれるパブがセビリアにオープンし、そこからフラメンコが世界中に広まった。多くの新曲が既存のレパートリーに追加され、カンテ・フラメンコはその人気の頂点に達した。この時期、カフェ・カンタンテにはセビリアのシルヴェリオ・フランコネッティ(Silverio Franconetti:1831〜1889)、カディスのエンリケ・エル・メジゾ(Enrique el Mellizo:1848〜1906)、ヘレスのアントニオ・チャコン(Antonio Chacon:1869〜1929)、マヌエル・トーレ(Manuel Torre:1878〜1933)をはじめ、多くの優れたフラメンコ・アーティストが出演した。ラ・ニーニャ・デ・ロス・ペイネスLa Niña de los Peinesとしても知られるパストーラ・パボン(Pastora Pavon:1890〜1969)は、その時代の最も有名な女性歌手だ。

19世紀の終わりが近づくにつれて、カフェ・カンタンテの人気は次第に薄れ、20世紀初めにはフラメンコの時代は終わりを告げた。しかし、第二次世界大戦後、ラ・アルヘンティーナ(La Argentina:1890〜1936)や世界最大のダンスマドンナ、ヴィンチェンテ・エスクデロ(Vincente Escudero:1888〜1980)、あるいはBallet Españolで有名なロザリオ(Rosario:1918〜2000)とアントニオ(Antonio:1921〜1996)などのスターの登場で、フラメンコは爆発的な復活を享受した。ホセ・グレコ(José Greco:1918〜2000)は映画「80日間世界一周」での優れたダンスで有名であり、カルメン・アマヤ(Carmen Amaya:1918〜1963)は、「La Historia los Tarantos(バルセロナ物語)」で素晴らしいフラメンコ舞踊を披露している。

ムルシアーノの後、フラメンコギターはカディスのエル・マエストロ・パティーニョ(El Maestro Patiño:1829〜1902)、コルドバのパコ・デ・ルセナ(Paco Lucena:1859〜1898)、ヘレスのハビエル・モリーナ(Javier Molina:1868〜1956)らによって進化した。
そして、フラメンコギターを伴奏ではなく独奏の楽器として最前線に押し出したラモン・モントーヤ(Ramon Montoya:1880-1949)の功績は素晴らしいものだった。

以後、
マノロ・デ・バダホス(Manolo de Badajoz:1892〜1962)、
ペリコ・エル・デル・ルーナー(Perico el del Lunar:1894〜1964)、
エステバン・サンルーカル(Esteban Sanlucar:1910〜1989)、
カルロス・モントーヤ(Carlos Montoya:1903〜1993)、
ニーニョ・リカルド(Niño Ricardo:1904〜1972)、
ペペ・マルティネス(Pepe Martinez:1922〜1984)、
サビーカス(Sabicas:1912〜1990)、
メルチョール・デ・マルチェーナ(Melchor de Marchena:1907〜1980)、
ルイス・マラヴィラ(Luis Maravilla:1914〜2000)、
マリオ・エスクデロ(Mario Escudero:1928〜2004)、
リカルド・モドレーゴ(Ricardo Modrego:1934〜2017)、
ホアン・セラーノ (Juan Serrano:1935〜)、
パコ・アギレラ(Paco Aguilera:1906〜1986)、
アンドレス・エレディア(Andres Heredia:1924〜2012)、
フアン・マヤ(Juan Maya:1936〜2002)、
ビクトル・モンヘ(Victor Monje:1942〜)、
パコ・デ・ルシア(Paco de Lucia:1947〜2014)、
パコ・ペーニャ(Paco Peña:1942〜)、
マニタス・デ・プラタ(Manitas de Plata:1921〜2014)
らがすぐに彼の後に続いた。




演奏姿勢とスケール

演奏姿勢

クラシックギターの演奏姿勢は、左足をフットスツールに置き、ギターを右太ももに乗せるのだが、フラメンコではフットスツールは使わなない。ギター本体の最も広い部分を右太ももに乗せ、右腕の下にしっかりと保持する。このポジションは初心者には扱いにくいように見えるが、練習するとかなり快適だ。また、ソロギターを弾くときは、右足を左太ももの上にのせて交差させることがある。

スケール

フラメンコは、メジャー、マイナー、フリジアン(全音階)モードにスペインのフレーバーを付加したものである。
Eフリジアンスケールの音階はE,F,G,A,B,C,D,Eとなり、最も一般的なコード進行は、
  • Eナチュラル(フリジアン)スケール:Am → G(7) → F → E
  • Aナチュラル(フリジアン)スケール:Dm → C7 → B♭ → A
  • Bナチュラル(フリジアン)スケール:Em → D7 → C → B
  • F#ナチュラル(フリジアン)スケール:Bm → A7 → G → F#
となる。

メジャーキーは主にC(ハ長調)、G(ト長調)、D(ニ長調)、A(イ長調)、E(ホ長調)が使用され、マイナーキーはAm(イ短調)、Dm(ニ短調)、Em(ホ短調)が使用される。その他のキーはほとんど使用されない。

次回はフラメンコギターの演奏において最も華やかな、ラスゲアードとゴルぺについてを予定している。

(参考:「Flamenco Guitar : Edited by T.Koizumi」)

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