普通の旅行会社員がSOHOで起業・継続できている訳21 - そもそも旅行業で独立起業すべきか?

旅行イメージ
4月である。新入社員が入り、部署が変わってリフレッシュ・スタートの月だ。当社は新たに社員を採用していないのでわからないが、おそらく旅行業界にも新しい業界人が多数生まれたことだろう。

会社のウェブサイトの改修作業に追われていたため、3月末以来ブログを更新していなかった。主に問い合わせフォームや申込フォームなど、大事な依頼が入ってくるその窓口を改修していた。と同時に、本格的にブログを書き始めて約1年、改めてブログを書くことの難しさを痛感していた時期でもあった。
そんな時偶然に、元気な旅行会社社員(恐らく新人だろう)のブログを読ませてもらい、自分が新入社員の時に感じたことと、今の新入社員が感じることにさほど違いがないことをうれしく思った。そして再び、この「普通の旅行会社員がSOHOで起業・継続できている訳」を続けていこうと考えた。たいした経験ではないが、旅行業界について綴っていくことは大事だと思った。

旅行会社の社員をやめて独立起業した17年前と比べると、今は起業する人が格段に増えた。会社法が変わり、働き方改革で企業は副業を認める時代になったからかもしれない。SNSでは起業してこれだけ成功したと豪語する人が溢れている。それが真実かどうかは定かではないが、今もう一度旅行業界で独立起業することを考えてみたいと思う。

旅行業で起業することのメリット

あくまで自分の経験からではあるが、旅行業で起業することのメリットは以下の通りだ。

1.自分がやってみたい旅行を自分で作って世の中にアピールできる

会社にいれば、会社の方針に従って旅行を販売していくのが当たり前。けれどもこの業界にいる限り、「こんなツアーを企画してみたい」と誰もが思うだろう。それを可能にするのが、自分の会社を持つことだ。筆者も会社員時代にいろんな企画を上に提案してはみたが、ほぼ玉砕状態だった。そして独立起業した時に、会社員時代に提案したことがその頃の旅行業界の流れには沿っていなかったのだと実感した。
今、旅行は団体から個人へと変わった。自分が独立した経緯はこのシリーズで書いてきたが、独立してやっていけると考えた大きな要因は、いち早く個人旅行にシフトしたことだ。
また、海外には日本にはない魅力的なコンテンツが多数ある。それを見つけた時、自分の判断で仕入れて販売していくことが出来る。筆者の場合、その代表的なものはテニス観戦商品と乗馬ツアーだった(詳細は当社公式サイトをご参照あれ)。そして、旅行業界は個人旅行にシフトしてきたと同時に「自然」を体感する旅行が増えてきた。乗馬ツアーはまさに自然を体感する旅行コンテンツだ。
このように、自分の眼鼻だけで判断する厳しさはあるが、自分がやりたいと思ったら即進めることが出来るのが独立起業の大きなメリットだ。

2.サービス残業に追われる会社とは違い、自分でスケジュールを立てて営業できる

「独立起業=会社経営者」、いわゆる社長だ。大企業では違うかもしれないが、自分で起業するのだから会社の方針はすべて自分で決めることが出来る。とことん突き詰めたい仕事があるときは徹夜し、そうでないときは思い切って休みにする。こんな営業スケジュールを、全て自分で決めることが出来る。
もし共同経営者やスタッフがいる場合でも、少人数で全て決められるので意思決定がスピーディーだ。普通の企業だとそうはいかない。課長や部長の決裁、その後は担当役員、そして会社代表の決裁、ひとつのプロジェクトが決定するまでかなり時間がかかる。

3.売上が全て自分に跳ね返ってくる

これは特にSOHO型会社で起業した場合のことだが、ある旅行商品がヒットし売り上げが倍増すれば、それは全て自分の成果だ。そしてその売り上げが自分の収入に直接跳ね返ってくる。旅行業界でなくてもこれは当てはまるだろう。やっぱり収入が増えると、モチベーションは上がるものだ。
そして必要なものは、会社の経費として購入することが出来る。個人の支出と混同してはいけないが、会社の備品として購入すれば、それは会社の経費に計上できる。

4.休みも自由、好きな時に好きな旅行が出来る

休日については2と同じ理屈だ。もともと旅行業界に入ってくる人は旅好きな人ばかり、休みが出来れば好きな旅行が出来るだろう。

5.自分が会社の「顔」になる

SNSがコミュニケーションツールの主流となっている現在、企業の「顔」になることにはいろいろな意味がある。これからの時代は金銭による資産ではなく、人とのつながりがその人の本当の資産となるだろう。そんな時、企業の顔であるということは、さらなるつながりを広げることが出来ると考えている。

旅行業で起業することのデメリット

では反対に、デメリットは何だろうか?

1.起業時にある程度資金が必要

2006年の会社法改正前までは、最も小さな会社規模の有限会社でも最低300万円の資本金を用意しなければならなかった。しかし、この法律改正により理屈上は0円でも会社を設立することが出来るようになった。
しかし旅行会社設立の場合は、この理屈は通らない。旅行業界にいる人であればご存じだろうが、旅行会社は旅行業登録及び更新登録時に必要な「基準資産額」を確保しなければならない。旅行業代理業の場合は不要だが、第3種旅行業の場合、基準資産額は300万円だ。まずは会社設立時に資本金として300万円を用意する。それだけでは足りない、その他旅行業協会への入会金が必要だ。なぜなら、協会へ加入することにより営業保証金の1/5の弁済業務保証金を用意すればよいからだ。まともに営業保証金を最初から用意するのであれば、第3種旅行業でさらに300万円が必要となる。
筆者の場合、登録相談のために東京都産業労働局観光振興課旅行業係へ相談し、これらをクリアするには最低420万円必要とアドヴァイスされた。その通り420万円を用意して開業したわけだ。
他の業界はそれこそ0円で独立起業できるかもしれない。ましてネット上にお店をもって起業ともなれば、かかる費用は微々たるものだろう。しかし旅行業界は違うのだ。

2.赤字の時は全て自分に跳ね返ってくる

メリットの「売上が全て自分に跳ね返ってくる」の真逆のこともある。会社の赤字は自分で負わなければならない。スタッフがいる場合、人件費は最低限確保する。その上で余分なコストカットを行っていかなくてはならない。

3.会社員時代と比べて収入が増えるとは限らない

旅行業界は給料が安いことで知られている。それを解消するため他の業界に転職する人が多い。また、ここに書いている通り独立起業して収入を増やそうと考える人もいるだろう。
だが、会社経営はそんなに甘くはない。2と連動するが、赤字になれば自分の給料を未払いにしても、必要な経費や人件費だけは支払わなければならない。時には自分の資産から持ち出しをしなければならなくなるかもしれない。そこまでして独立起業する意味があるのかと疑問に思うことがあるのも事実だ。

4.トラブル発生時に全て自分で対応する

幸いにも筆者の会社では、開業以来事件・事故に巻き込まれたことはない。だが、旅行にトラブルはつきものだ。万が一、ツアー中の交通事故やテロに巻き込まれるなど、想定外の事件に遭遇することがあるだろう。そのためには、常日頃から万全な対策を立てておかなくてはならない。
だがこんな時、旅行業協会は旅行会社の強い味方となってくれるので、少しは安心してもいい。日頃から緊急事故支援に関するセミナーや旅行医学セミナーを開催するなど、事故対策に関する旅行会社をサポートする様々なシステムを用意している。小さな会社ほど、協会のサポートを積極的に利用すべきだ。

5.5年に一度の更新登録

最も厳しい現実を味わうのが、他の業界にはないであろう旅行業更新登録だ。上述の通り、新規登録時以外に5年に一度更新登録手続きを行わなければならない。その時、会社の決算書から計算する基準資産額として、最低額の第3種旅行業の場合、300万円なければならない。たかが300万円、と思うだろうが、現金をポンと用意すればよい話ではない。また、銀行から借り入れして用意することもできない。決算書上でこの金額をねん出するのは、小さな旅行会社ではなかなか難しいことだ。

他社にはないものを作るということ~結論

昔は顧客を多く持っている営業担当が独立するものだった。しかし現在では、この理屈は成り立たない。大げさに言えば、旅行会社で得てきた顧客の数は無意味だ。新しい会社で、新しい顧客を獲得するため、どれだけオリジナリティがある会社なのか、どれだけ他社とは違うホスピタリティがあるのかがこの業界を生き抜く術だ。
旅行業界で独立起業するということは、会社を作ってハワイやグアムのパッケージツアーを販売していればよいということではない。そこにはIT業界ばりのアイデアと発想力が必要だ。もし、ただただ旅行業界でキャリアを積んだだけでは、独立起業はお勧めしない。

その上で、旅行業界で独立起業すべきか否か?の結論…

以下の条件があれば、悩むより独立起業すべきだろう。
  • 上述の開業資金を用意できる
  • 今の旅行業界にはないアイデアを持っている(または考えられる)
  • 旅行が好き(これに勝るものはなし)
結局のところ、どの業界においても独立起業はきっかけと思い切りだ。開業してしまえば、あとは何とかなるものだろう。
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