SOHOによる旅行会社の作り方20 - 旅行会社の存在意義

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旅行会社はとかくネットであれこれ書かれ、なぜだかいつも“善”ではなく“悪”として捉えられがちだ。旅行業界では結構大手といわれていたある会社が、昨年資金繰りにより旅行客を出発させることが出来ず、結果破産申請した。この会社の社長は逃げ隠れしたわけではないが、旅行会社はいつも「資金繰りに苦しくなると、お金を持って逃げる」会社の象徴のように書かれている。
常々いろいろ叩かれている旅行業界だが、先日下記のようなネット記事を見つけたので、この業界にいる者として興味深く読ませて頂いた。
そしてこの記事をきっかけに、「SOHOによる旅行会社の作り方」シリーズに一旦区切りをつけるため、旅行業界の未来展望について持論を書いておこうと思う。

旅行会社は決してなくならない…と思う

この記事のタイトルは「旅行会社、存在意義消失の危機」だ。しかし、何をもって旅行会社がなくなるというのか?
旅行会社、存在意義消失の危機...大型倒産や挙式ツアー直前中止事件の背景
この記事を読む限り、執筆された方はおそらく旅行業界のことをよく知らないのだと思う。この記者に限らず、TVをはじめとしたメディア、ネット界、挙句の果ては法律関連のコメンテーターに至るまで、旅行業界のことを十分に把握しているとは思えない。
にもかかわらず、上述のように旅行会社が倒産するたび(確かに顧客に与える影響は大きく、メディアで取り上げられやすい)に、さもこの業界を熟知しているかのように語っている。
この記者も、おそらく通り一遍のことはご存じなのかもしれないが、このようなディープな記事を書くからには、もう少し旅行業界のことをお調べになってから書いていただきたいと感じた。

結論から申し上げると、筆者個人は旅行会社はけっしてなくなることはないと常々思っている。だからこそ、このように小さなSOHOスタイルながら旅行業を続けている。その理由を以下の通り説明したい。

旅行はパック旅行だけではない

この記事を書いた方が旅行業界を熟知していないのでは?と疑問を持った理由の一つはこうだ。

旅行業界でひとたびトラブルが起きるたびに反応するメディアやネット界のコメントを聞いたり読んだりすると、一様に「パック旅行を販売するのが旅行会社」として説明している。
では、一切パック旅行なるものを販売していない当社は旅行会社ではないのか?

答えは「No」である。

旅行会社は旅行業法に則って営業している。その第2条では以下のように旅行業を定義づけている。
この法律で「旅行業」とは、報酬を得て、次に掲げる行為を行う事業(専ら運送サービスを提供する者のため、旅行者に対する運送サービスの提供について、代理して契約を締結する行為を行うものを除く。)をいう。
一 旅行の目的地及び日程、旅行者が提供を受けることができる運送又は宿泊のサービス(以下「運送等サービス」という。)の内容並びに旅行者が支払うべき対価に関する事項を定めた旅行に関する計画を、旅行者の募集のためにあらかじめ、又は旅行者からの依頼により作成するとともに、当該計画に定める運送等サービスを旅行者に確実に提供するために必要と見込まれる運送等サービスの提供に係る契約を、自己の計算において、運送等サービスを提供する者との間で締結する行為
二 前号に掲げる行為に付随して、運送及び宿泊のサービス以外の旅行に関するサービス(以下「運送等関連サービス」という。)を旅行者に確実に提供するために必要と見込まれる運送等関連サービスの提供に係る契約を、自己の計算において、運送等関連サービスを提供する者との間で締結する行為
三 旅行者のため、運送等サービスの提供を受けることについて、代理して契約を締結し、媒介をし、又は取次ぎをする行為
四 運送等サービスを提供する者のため、旅行者に対する運送等サービスの提供について、代理して契約を締結し、又は媒介をする行為
五 他人の経営する運送機関又は宿泊施設を利用して、旅行者に対して運送等サービスを提供する行為
六 前三号に掲げる行為に付随して、旅行者のため、運送等関連サービスの提供を受けることについて、代理して契約を締結し、媒介をし、又は取次ぎをする行為
七 第三号から第五号までに掲げる行為に付随して、運送等関連サービスを提供する者のため、旅行者に対する運送等関連サービスの提供について、代理して契約を締結し、又は媒介をする行為
八 第一号及び第三号から第五号までに掲げる行為に付随して、旅行者の案内、旅券の受給のための行政庁等に対する手続の代行その他旅行者の便宜となるサービスを提供する行為
九 旅行に関する相談に応ずる行為
電子政府の総合窓口e-Govより)
法律なので長々となってしまったが、「報酬を得て、旅行者が運送または宿泊サービス等の提供を受けるため代理して手配し、一定の事業として行う」ことを総称して「旅行業」という。これは「パック旅行」を作って販売する(第2項及び3項に書かれている企画旅行)だけではない、ということを明確に示している。

そしてこの記事に書かれていた旅行会社の存在意義消失の危機の原因は、大きく以下の2点によるものとしている。
  • ネットの発達により旅行者が直接航空機やホテルをリーズナブルに手配できるようになった(パック旅行のうまみがなくなった)
  • パック旅行は1か月前からしか取消料を徴収することが出来ず、諸外国の規定と合っていない
しかしこのようなことをあれこれ言われるのは、今に始まったことではない。取消料の件などはおそらく20年以上前から言われていることだ。にもかかわらず、このような記事がいまだに新着記事として出回るということは、「ああ、おそらくこの記者は“旅行=パック旅行”としか捉えていないんだな」と思ってしまう。

当社のように、旅行者のニーズに合わせたオーダーメイド型の旅行を提供している会社は、その旅行を形作る素材ごとの規定を丁寧に説明しているので、1か月前まで取消料を徴収できない、ということはあり得ない。海外旅行なのだから、海外の条件が適用されることもままあるのだ。

反対にこのようなことが出来ていないパック旅行専門会社は、記事の通りすでに「存在意義消失の危機」に直面しているかもしれない。だから記事すべてが間違いというわけではないことを強調したい。

日本人の気質や言葉の壁はいつまでも変わらない

筆者が、旅行会社はなくならない、という理由の2点目は、日本人の気質と言葉の壁にある。

マイナスのイメージで申し訳ないが、島国に住む日本人は、それだけによけい海外に憧れをもっている。にもかかわらず、世界の共通言語である英語をはじめとした語学力は、いつまでたっても身につかない。以前このブログ内の記事「結局日本人が英会話とダイエットに弱い話~ちょっと長い独り言」に書いた通りだ。

いったいいつになったら、日本から英語学習というものがなくなるのだろう。英語は学習するものではない、単なる言語だ。コミュニケーションのツールとして使えれば、文法など考える必要はない。
そのいい例として、先日TVで訪日外国人でにぎわう長野県の野沢温泉を取り上げていた。そこで店を開いている人達は、身振り手振りだけで訪れた外国からのお客様ときちんとコミュニケーションが取れていた。これこそが語学ではなくコミュニケーションツールであるいい例だ。

しかし、ほとんどの日本人は、ひとたび海外へ出かけると「なんとかその街の人達に笑われないように話さないといけない」という気負いがあるため、完璧に覚えようとする。そして旅行から帰ってくると、その努力はピタッと終わってしまう。
会社勤務で必要に迫られて、「朝活(アサカツ)」などで英語を懸命に習得しようと努力しても、英語で話す機会がなくなるとその努力は続かない。
どちらも「努力」して語学としての英語を習得しようとしているからだ。

そしてもう一つの日本人が持つ独特の気質は、うまく言えないが自由に旅することを制限している。日本以外の国の人達は、海外旅行の際に出遭う困難やちょっとしたトラブルを「エクスペリエンス(体験)」として捉えることが出来る。例えば、訪日旅行客が雪深い温泉宿に行くため、交通機関が利用できない道をかき分けて歩くことさえ、彼らは「エクスペリエンス」として捉えることが出来るのだ。

しかし日本人はどうか?「なるたけ海外旅行でトラブルには遭いたくない、困難を避けてゆったりと旅行したい、だってバカンスなのだから…」と思うのが普通だろう。身体的リスクは別として、予期せぬことを楽しむことが出来ないのだ。そのような気質の日本人に、自分で航空券やホテルを手配して、現地で起こるトラブルを自分で対処できるだろうか?

当社では、ホテルや現地のツアーを手配して旅行客に最終書面をお渡しする際、出来る限り手配先の現地緊急連絡先(それも日本語で対応している)を一緒にお渡ししている。ホテルひとつとっても、ホテル側のミスによるオーバーブックは日常茶飯事だ。このことは日本で営業する限り必要だと思って行っているが、それは現地の日本人担当者に頼ることなく、自分で対応できる日本人はまだまだ少ないと感じるからだ。

言葉の壁と日本人独特の気質が変わらない限り、旅行会社はいつまでも頼りにされるはずだ。昔から「医者と弁護士と旅行会社はお抱えで」と言うではないか、それくらいすぐに連絡できる“エージェント”が日本人には必要なのだ。

存在意義は自分で作るもの

他人に言われるまでもなく、どの業界も他社と同じことをやっていても、売上は上がらない。旅行会社という大きなくくりではなく、自社がどうやってこれからを生き抜くか、それには独自の存在意義というものが必要だ。他社と同じことをやっていては、存在意義は薄れてくる。

最初の記事に戻るが、パック旅行を販売しているだけでは存在意義はないと思う。おそらく執筆された記者も、そのような警鐘を鳴らしたかったのだろう。

では、旅行会社としての存在意義はどうしたらなくならないで済むのか?

それは各社まちまちなのだから、「こうしたらこの業界で生き残ることが出来るよ」ということを言ってあげることはできない。筆者も、売上が低迷した小さな旅行会社でリストラに遭いそうになり、先手を切って起業すると言い残してその会社を辞めた。それから17年、常に自社の存在意義を考えている。

SOHOスタイルで人件費という最大のコストを抑え、販売したいと思う海外のスポーツ観戦チケット及びパッケージがあったら、直接そこにメールして代理販売承諾を取り付ける。通常、旅行会社はこのような作業をランドオペレーターという現地手配会社及びその日本支社を通して行うが、当社はランドオペレーターは経由しない。世界のどの国だろうと、直接連絡する。そしてそのような商品を、必ず申し込みたいという旅行客が存在する。

これが筆者の会社の存在意義だ。特別なことはしていないが、SOHOスタイルで少人数のスタッフが食べていけるだけの売り上げがあがればいいのだ。そして、これからもずっと、パック旅行を販売するだけの旅行会社ではない。

終わりに

筆者が会社を辞めて独立起業して17年経った。その間に体験・実践したこと、考えたことを20回にわたって記事にしてきた。この記事を読めばタイトルのように旅行会社が作れる、と方法論を書いているのではない。あくまで今までしてきたことが、誰かの参考になればと思って書き続けただけだ。

もう一度強調するが、旅行会社はなくならない。いつまでも必要とされ、頼りにされるだろう。

だから海外旅行に興味を持ち、給料が安いからと嘆いてばかりではなく、旅行業界で活躍してほしい。筆者の会社が何をしているかは、以下ウェブサイトを見てほしい。

有限会社フライト

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