SOHOで旅行代理店を起業⑯ - ポータルサイトから得る教訓

ポータルサイトイメージ

これは、SOHOで旅行代理店を起業した筆者の体験記である。

どの業界にも、その業種に特化したポータルサイトがある。旅行業のポータルサイトで知られているのは「トラベルコ」や「楽天トラベル」などだ。
小さな会社を立ち上げた時、業界大手のポータルサイトに自社サイトを登録して、少しでも認知してもらおうという気持ちは誰にでもあるだろう。だが、ポータルサイトの正しい利用方法を知らないまま登録すると、けっこう大変な目にあうので要注意だ。
筆者が旅行ポータルサイトを利用した体験をもとに、小さな会社がポータルサイトとどう付き合うかをまとめてみる。

低価格の初期利用料金は長くは続かない

このシリーズで、以下記事にも書いたことを少し振り返ってみる。

SOHOで旅行代理店を起業③ - 失敗しない旅行業

これは、SOHOで旅行代理店を起業した筆者の体験記である。よく「失敗しない〇〇」という言葉があるが、社員を抱えることなく自分達が食べていけるだけ稼いでいけばよい、という楽な気持ちで始めたのだから、失敗するかしないかを悩む必要はない。だが、自分たちなりの「失敗しない」旅行業を営業していく必要はある。しかし、失敗しない旅行業などあり得ない。

開業したての時は、当然ながら顧客というものがない。だから、自社のファンともいえる顧客を少しでも増やすためにどんな方法があるかを考えたちょうどその頃、旅行業界紙「トラベルジャーナル」を発行する会社から派生した会社が新たな旅行ポータルサイトを立ち上げたことを知った。
このサイト「e-旅ネット・ドット・コム」はBtoB及びBtoCを結ぶ、今でいうマッチングサイトのようなものだ。その仕組みは、
  1. こだわりの旅を求めている消費者がウェブ上で旅行見積もりを登録
  2. それに対して登録した複数の旅行代理店が見積もりに回答・消費者にメールで届く
  3. 消費者は複数の見積もりを見比べ、自分の希望に合った旅行代理店と契約
というシステムだった。
消費者側の見積もり依頼は無料で依頼でき、なおかつ複数の旅行のプロが自分のために最高の旅行プランを見積もってくれる、その当時としては画期的なシステムだった。
一方旅行代理店側もサイト登録自体は無料だが、見積もりを1件回答するごとに80円の費用がかかる。封書の郵便代が80円だったので、それくらいならと思いすぐに登録した。

登録開始からすぐに、依頼一覧ページに毎日入ってくる見積もり依頼に対して回答し続けた。得意なヨーロッパ方面をメインに選び、旅行形態もオーダーメイド旅行スタイルやパッケージツアーなど、様々なタイプで見積もりを回答した。多い時で1か月に300件くらいは見積もりを返しただろうか?それでも1件80円なのだから、1か月のポータルサイト利用料は24,000円だ。

ポータルサイト側も、サイト立ち上げ当初から登録した旅行代理店として、当社の意見をいろいろ聞いてくれた。例えば、サイト内に「こだわりの旅」というページを設け、登録旅行代理店のイチオシ商品をデジタルパンフレット形式で掲載することが出来るようになった。このページには1社につき5プランまで掲載することが出来て、見積もり利用料とは別扱いだが月額1万円だ。少しずつ自社ウェブサイトも充実し始めてきた頃だったが、まだまだ認知されない自社の商品を少しでも知ってもらうため、ここにも登録した。
時代の先端を行くポータルサイトとしてTVに取り上げられたときは、その利用旅行代理店代表としてその番組のインタビューに答えたりもした。TVに自分が写ったのは、後にも先にもこの時だけだろう。

こうして少しずつだったが、ポータルサイトから「顧客」を獲得できるようになってきた。

値上げと費用対効果

ポータルサイトと当社とは、お互いの良いところを利用し合っていい関係が続いたように見えた。しかし突然、ポータルサイト側から利用料金の値上げの知らせが来た。考えてみれば相手も企業、こちらも企業、利益に基づく値上げが絶対にないとは限らない。

もともと、封書で送る感覚の見積もり回答費用が1件80円で済んでいたので、回答出来るものは手当たり次第回答し続けてきたものの、新たな料金体系は今までとは全く違った極端な値上げだった。「e-旅ネット・ドット・コム」は今でもあるポータルサイトなので、その会社について詳細に書くのははばかられるが、新たな利用料金は今までの10倍以上だった。

そもそも、旅行商品はほとんどが仕入及び経費で成り立っており、利益は10~20%といったところだ。これまで、ちょっとした経費として計上するだけで利用できたポータルサイトが、急に仕入れ代ほどの料金まで吊り上げられたため、当社のような小さな会社は「このままこのポータルサイトを利用すべきかどうか」という判断に迫られた。

しかし、最終的には契約を継続し新たな料金にて利用し続けた。

なぜなら、まだ自社サイトだけで集客できる自信がなかったこと、また自社サイトのアクセスはポータルサイトに登録しているから集まっているのだろうと判断したからだった。
今では考えられないことだが、そのときはまだSEOの何たるかも知らず、自分たちの作りたいままに自社サイトを作っていたのだ。そして何より、その時点ではまだまだ見積もり共同入札には魅力があった。

さらにその2年後、再度値上げとシステム変更があった。

今までは個人・団体旅行の見積もり依頼どちらも回答することが出来たが、今回の値上げでは個人旅行または団体旅行どちらかのみの回答という制限つきだった。当社は個人旅行を主に取り扱っていたので個人旅行プランを選び、それでもまだ入ってくる見積もり依頼の魅力にひかれて、値上げを受け入れて利用し続けた。

そして2011年、東日本大震災が起きた。これにより旅行需要は極端に減った。復興も兼ね、普段通りの生活をすべきとあちこちから聞こえてきたが、サービス業はこのような自然災害には弱い。
ポータルサイトに集まる見積り依頼も、その時以降だんだんと減ってきたのだった。それは売り上げの減少を意味していた。利用当初1件80円だった利用料金が変貌し、最終的な料金体系はSOHOの会社にとって大きな負担となってきた。




ポータルサイトの利用から得る教訓

顧客がいなかった開業当初から約13年、利用し続けた見積もり共同入札のポータルサイトだったが、最終的にその利用をやめることにしたのは以下の理由からによる。
  1. 市場の不況に合わせて旅行の見積もり依頼自体が減ってきたこと
  2. ポータルサイト利用料金が会社の経営を圧迫してきたこと
  3. 自社サイトからの直接利用客が増えてきたこと
このうち1については、ポータルサイトに責任はないだろう。2についても、もし自分がポータルサイト側の経営者だったら考えたに違いない。なので、一方的にポータルサイトを責めるわけにはいかない、低迷した旅行市場によるものだった。

しかし、このブログでも紹介しているように海外テニス観戦や海外乗馬など、一般の旅行代理店とは少し違ったものを取り扱っているということもあってか、3の自社サイトから直接見積もりの依頼がだんだん増えてきたことが大きな理由となった。
だらだらとただ情報を垂れ流しているだけで検索にも引っかからないようなウェブサイト作りをやめ、SEOを考えつつ、アクセス数が伸びてなおかつ売れるサイトとはどういうものか、真剣に考えるようになった。

そうなると、いつまでもポータルサイトにしがみついている意味はなくなる。ここまで気づくのに13年かかったのは遅すぎたかもしれないが、結果このポータルサイトから退会し、開業当初からのポリシーのひとつである「自分達でできることは自分達で」を貫くこととした。

いまではSNSの普及により、SEOだけではない様々な戦略を立てることが出来る。ポータルサイトは開業当初の、まだ右も左もわからない時にだけ頼る術と考えるほうがよいという考えに至ったのだった。

小さな会社のくせに、ポータルサイトからこのような教訓を得るまで、大分勉強代を支払った気がする。だが、ウェブサイトにはまだまだ未知なる利用方法がたくさんあるだろうし、そこから会社の売り上げを伸ばすのは自分次第だ。

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