SOHOで独立起業・旅行会社の作り方⑫ - 旅行業で生き残るために必要なこと

長年旅行業をやっていると、お客様からよくこんな質問をされることがある。

「この国へ行かれたことはありますか?」

初めて訪問する国の情報は、訪問経験者から聞くのが一番ということなのだろう。

だが、旅行会社に勤務しているからといって世界中の国々全てを訪問できるわけではない。基本的には会社勤めのサラリーマンと同じようなもので、通常はデスクワークが主である。たまに休みが取れて海外へ出かける機会があっても、1度に20~30か国も周れるほどの休みが取れるわけではなく、せいぜい1~2か国である。人生にそんな休みが何回取れるだろうか?

会社を作るのは誰でもできるが、長く安泰に経営し続けるのは難しい。SOHOでの旅行会社経営は自分が食べていけるだけの利益を得ることが出来ればいい半面、経営し続けるにはそれだけでは足りない。今回はSOHOでの旅行会社に限らず、旅行業界で働いている人全てに言えることを、少しまとめてみた。

旅行業は情報サービス業

さて、上述のよくある質問に対して、旅行会社スタッフであれば何と答えるべきか?

「いいえ、私は行ったことがありません。」

ではお客様は不安に思うだろう。かといって、

「ええ、2~3度訪れました。」

ではお客様に嘘をつくことになる。

筆者はこのように答えることにしている。

「ええ、良く存じています。」

と…。こう答えていれば、お客様に対して嘘をついているわけでもなく、不安を与えているわけでもない。例え自身が行ったことがない国についての質問でも、旅行会社として知識や情報を十分に得ていれば、お客様に対して安心と的確な情報を与えることが出来る。

旅行業は情報を提供するサービス業なのだ。

ずいぶん前の話だが、あるヨーロッパのツアーを造成・販売している会社の社長は、実はヨーロッパに一度も行ったことがないにもかかわらず、ツアーの企画は全て自身で行っていると聞いた。まだインターネットもコンピューターもない時代からだ。
この話を聞いて「旅行業というのはそういうものか」と、まだ駆け出しの頃の筆者はとても腑に落ちた。

この会社社長は、いつも広いデスクの上にヨーロッパ全土の地図を広げ、町から町の距離を測っては移動時間を算出し、プランを造成していくのだそうだ。フライトスケジュールはABC(古い業界の人ならご存知だろう、国際航空時刻表だ)、ホテルはミシュランやその他のホテルガイド、鉄道はトーマスクックと、全てが書物から情報を得る時代だった。
実際にツアーを催行し、添乗員は現地で多少の誤差を感じることはあっても、プランを考えた社長には脱帽の思いだったかもしれない。

つまり、旅行業は情報が全てである。そして、お客様に負けないプロとしての情報を持っていれば、上述の質問にも何も躊躇なく答えることが出来る。

情報が豊富な現代の旅行業

現代は情報過多で、なおかつリテラシーがないと的確な情報を得ることが出来なくなってきてしまっている。旅行についても同様で、航空券検索サイトやホテル検索サイトは、見比べることも出来ないほどネット上に膨大に溢れている。その中でどれを信頼して手配すればいいのか、一般の旅行客は迷うことだろう。そして最後に頼るのは口コミだ。これほど危険なものはない、と筆者は常々考える。

一方旅行会社に勤める人は、いわゆる「旅のプロ」だ。

旅行会社はそのツールとして信頼できる情報を持ち、信頼できる手配先に大事なお客様の旅行手配を託すことが出来るルートを持っている。インターネットが発達した今、誰もが旅行についての情報を得ることが出来、行ったことがない国のことでも「旅のプロ」顔負けの情報を持っている人さえいる。

だが、「旅のプロ」がもつ情報ソースは、一般の人がインターネットを駆使して得た情報とは全く違うものだ。旅行業法にのっとって安全に、安心できる旅行を提供する義務がある旅行会社の情報は、一般のディープトラベラーとは違う、旅行サービスを手配し提供するための情報を持っている。

だから、様々な検索サイトにいくら旅行会社のお株を獲られようとも、旅行会社が日本からなくなることはないだろう。旅行をしようと思う人は、最後にはやはり旅行会社を頼るのだ。例の質問も、インターネットでは埒が明かなかったからこそ出る質問と考えている。

また、情報は同業他社と競合する場合があるが、それを気にする必要はない。当社では海外テニス観戦や乗馬ツアー、セントアンドリュースのゴルフプレーパッケージなどを取り扱っているが、どれも独占契約販売ではない。どの旅行会社でも取り扱うことが出来るものばかりだ。いまや利権で独占販売する時代ではない。

筆者は、これらの特殊な商品について例の質問をされる機会があったとしても、何ら返答に困ることはない。もちろん実際に全て訪れていて、実際に体験していることが「旅のプロ」としてベターなのは筆者にもわかる。

必要なのは、それを販売するための「旅のプロ」だけが得ることが出来る情報をもっていることだ。そうすれば、お客様はいつも手配した内容に満足を得ることができ、他社との差別化も図ることが出来る。そしてこれは長年実績を積み重ねてこなければできないことだ。
情報が先か、「旅のプロ」としての実績が先かとなるが、そんなことはどちらでもいい。どちらも業務として積み上げていき、自身の宝として持ち続けることが旅行業を長く続ける秘訣ではないだろうか。

集合体より個

これからの旅行業は、会社ではなく必ず「個」が大事になってくる。当社がSOHOで営業している理由の一つに、大人数が務める集合体としての会社では旅行業は必ず行き詰ると考えたからだ。

企業として得ることが出来る情報を豊富に持ち、そしてそれを駆使して個々の力を発揮する、これがこれからの旅行業の新しいスタイルになるだろうと考える。

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