サウンドホールの匂い ~ 4 フラメンコへの傾倒

Conde Hermanos EF-4
個人所蔵のConde Hermanos EF-4
初めて聞いたフラメンコギターの魅力。それは心を癒す音色とは違う、腹に響く重低音といわゆる「泣き」の高音がからみあう不思議な楽器だった。プロのギタリストではなく同じギター教室の長老さんが演奏する「コーヒー・ルンバ」ではあったが、そのテクニックに引き込まれた。この日からフラメンコに傾倒していった。

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マラゲーニャ

初めての発表会に参加したのち、レッスンは本格的に始まる。S先生はいつも有名人や政治家への痛烈な批判をよくされたが、身近な人たちの悪口はけっして言わない。年の功なのか、どの人についても悪く言わないどころか、必ずその人の良い点について話す。

自己流とはいえギター歴が長い私のレッスン時、「あなたは楽譜も読めるしギターについても良く知っていらっしゃるから、初級のテキストはすっ飛ばしましょう」とおっしゃった。楽器メーカーが発行し教室でテキストとして使用されているものは全部で4巻あった。他の人達は1巻目からじっくりやっているようだったが、このように言われて2巻目からレッスンは始まった。
自分としては、例えギター歴があってもクラシックは全く初めてなので、他の人と同じように1段ずつ階段を登るように覚えていきたかったが、S先生はそんなことはお構いなしだ。

簡単な曲をいくつかこなした後、次の曲に先生が選んだのはフラメンコの「マラゲーニャ」だった。コスタ・デル・ソルの都市マラガが発祥で、このマラゲーニャだけでいくつもメロディーがあり、初めて聞く人には聞き分けられないかもしれない。だが最後にはマラゲーニャ独特のコード進行がある。

フラメンコはアンダルシアが発祥の地といわれるが、はっきりとしていない。アラブの国々から流れ着いたヒターノ(ジプシー)達がレコンキスタ以前のスペイン全土に広めたと言われている。12拍子の独特なリズムはスペインに伝わってから確立されたといわれており、フラメンコの古い曲は拍子さえもわからないものがある。
そして人々の生活に密着し、祭りや冠婚葬祭の時に演奏されていき、地方ごとに独自のリズムと旋律が出来上がった。例えば私個人その旋律とリズムを気に入っている「シギリージャ(またはシギリーヤ)」は、葬儀の時の音楽だという。確かに繰り返し繰り返し同じ旋律とリズムが続くあたりは、どこか日本のお経にも通じるところがある。

S先生のお気に入りは「ファルーカ(またはファルッカ)」だった。スペイン北部アストリア地方の曲で、物悲しい旋律に特徴がある。いまだフラメンコのことを全てわかったわけではなく、奥が深いのがフラメンコだ。
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5連符のトレモロとゴルペ

クラシックで特徴ある弾き方といえば親指でベース音を弾き、薬指→中指→人差し指の順に素早く同じ高音弦を弾き、この一連の動作を4連符として弾くトレモロがある。有名なのは「アルハンブラの思い出」の旋律部分だ。
ところがフラメンコは1音多い5連符だ。親指→人差し指→薬指→中指→人差し指の順で、人差し指を2回使用する。
アコースティックやエレキギターでのトレモロはピックを使うのでさほど難儀ではないが、クラシックのトレモロは曲としてまともに聞こえるまでかなりの鍛錬が必要だ。なのにもかかわらず、いきなり5連符が入る「マラゲーニャ」に挑戦するのは、まだまだ無理なのではないか?そう思うと、

「そんなことないわよ。皆さん難しい曲に挑戦して、うまくなっていくんだから…」

とやけにあっさり。後々この言葉にずいぶん苦しめられるのだが、始めたばかりでは「そんなものなのか」と思ってしまう。

そしてもう一つ、ゴルペといってギターのボディを薬指などで叩いて曲にアクセントを着ける奏法がある。叩くこと自体は問題ないが、曲のリズムに乗りながらアクセントのために叩くというのはどうも難しく、タイミングがずれる。
先生は私のギター歴から想像して、「〇〇さんならすぐにできるようになるわよ」と軽くおっしゃる。結局15年先生に教わったのだが、トレモロもゴルペも満足のいくものには仕上がらなかった。

ギター教室をやめた(やめざるを得なかった)理由はのちのち書くつもりだが、若いころとは違いギターレッスンは一生続けなければ上達はしないものなのかもしれない。理由は何であれ、教室をやめたことはずっと後悔している。

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