サウンドホールの匂い ~ 1 クラシックギターとの出会い

フラメンコギターのサウンドホール
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ギターが好きだ。弾くことはもちろん、ギター自体のフォルム、音色、材質全てにおいて、だ。特にサウンドホールに鼻を近づけてその匂いを嗅ぐと、木の香りがして何とも言えない。出来れば毎晩この匂いを嗅ぎながら、ウイスキーのグラスでも傾けたいくらいだ。こんなことをしたことがある人は意外と多いのではないか?

そしてこの匂いを嗅ぐと、同時に懐かしさがこみあげてくる。今はわけあってやめてしまったが、あるギター教室の先生を思い出すからだ。

クラシックとフラメンコギターの教室

中学の頃から遊びで弾いていたギターは社会人になると弾く暇もなくなり、しばらくは全く手にすることもない時期が続いた。段々と仕事に追われて心身に余裕がなくなったあるとき、クラシックギターの音色にとても癒されたことがあった。

村治香織の「カヴァティーナ」だ。

それまで手にしたギターはアコースティックとエレクトリックギターだけだったので、クラシックギターの音色がとても新鮮だったことを覚えている。ちょうどパートナーがピアノを習っていたので、すぐに同じ音楽教室を紹介してもらい、クラシックギターの教室に通うことにした。

その時クラシックギターの先生は2人いたのだが、自分が通える時間帯に教えてもらえる先生の教室を選んだ。体験レッスンに参加させてもらうと、そこにいたのは自分の母親くらいの年齢の、おばあちゃん先生だった。聞くと若い頃スペインにギター留学していたという事もあり、こちらの教室なら間違いないだろうなと思った。 「この教室では、クラシックのほかにフラメンコも教えているの。興味ある?」と言われ、その時はフラメンコがどんなものかも分からなかったが、まぁ教えてもらうに越したことはないと思い、そのままこの教室に通うことを決めた。これが先生との出会いだ。

初めて手にしたクラシックギター

楽器メーカーが運営している音楽教室では、レッスン時に楽器を貸し出している。だからクラシックギターを持っていなくても、レッスンに通うことは出来る。だが自宅で練習したいということになると、やはりクラシックギターは必要だ。何しろ弦が違う。その他ネックの太さなど、自宅にあるアコースティックとは手にした感がまるで違うので、練習には使えない。

そこで先生(以後「S先生」と書くことにしよう)に、練習用にはどんなギターを買えばよいか聞いてみた。楽器メーカーの音楽教室だからそこの楽器を生徒に買ってもらうことが筋だろうと思いきや、自分の馴染みの池袋にあるクラシックギター専門店を紹介してくれた。店長の名前まで教えてくれ、「私の名前を出すと少し割り引いてくれるから」とまで教えてくれたのだった。

音楽教室を運営する楽器屋さんから買わなくていい?

ちょっと不思議に思ったが、そののちS先生は何かと変わっている人だということを知ることになる。それは追々書いていくとして、後日さっそく紹介してもらった店へと向かう。教えられたとおりS先生の紹介で、と伝えると、初心者用にタカミネ、コダイラ、マツオカの3本のクラシックギターを持ってきてくれた。その中で自分にしっくりとくるものを選んでくださいとのこと。

クラシックギターの入門モデルは数多くあるものの、ある程度の値段のものを購入したほうが良いと事前にアドヴァイスを貰っていた。店長が持ってきた3本は、S先生のアドヴァイスラインに近いものだった。
ギターの構造やどこに気を付けて買えばよいかはおおよそわかっているので、ネックや指板の材質などを見たのち実際に試し引きをして、もっとも手になじんだのがコダイラのAST-100だった。表面はシダー(杉)が多い入門モデルの中で、高級感があるスプルース(松)の美しさにも惹かれたのだ。そして、店員の目を盗んでサウンドホールの匂いを嗅いだ。

「これこれ、この匂い!」

こうして初めてクラシックギターを購入した。
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